ずれた展。

5月末の藝大陳列館の2階では、「ずれた」というタイトルを冠した国際現代版画展&シンポジウムが行われていた。
5大陸14カ国19校の大学から若いアーティストの版画作品を迎え、幾つかの大学や美術館の研究者による3日間に亘るシンポジウムも行うというもの。
そのテーマが、「ZURETA ずれた」。
<美術史は・・・・・、版画はその入り組んだ制作プロセスのために、失敗や間違いの機会を豊富に与えてくれます。・・・・・。版画による「ずれ」=失敗がしばしば新たな作品に繋がることから、私たちはこの展覧会を「ずれた」と名づけました>、とチラシにある。

そのチラシ、レイアウトも折りもずらしてある。
ニクい作り。

チラシの文言、2階入口にもそのようなことを記した貼り紙があった。
文部科学省国立大学機能強化事業「国際共同プロジェクト」なんだ。
[
3日間に亘るシンポジウム、東京藝大准教授・三井田盛一郎のキーノートスピーチから始まっている。テーマは「ずれたについて 翻訳的言語と母語」。
この後3日間、内外10人の研究者がキーノートスピーチやプレゼンテーションを行っている。「ずれた」について。
このようなタイトルで・・・
「不測の計算」、「創造力 ひとつの文化的な視座について」、「実体としての失敗:リアルタイムに変動する情報としてのエラー」、「版画からずれる:版画家による写真表現の現場」、「重なりと滲みによる変化するイメージ」、「事故的身体:版画の実践へ導くための紹介」、・・・・・。

私は、アムステルダム国立美術館のマライエ・ヤンセンという人のプレゼンテーションを聴いた。

ヤンセンさんのプレゼンのタイトルは、「浮世絵における失敗・出版の再考」という解りやすいものであった。
マライエ・ヤンセンというこの女性、あのアムステルダム美術館の日本美術部門のキュレイターをしているのであろう。何となしに心くつろぐ。
シンポジウム会場の四方の壁には、14カ国19大学の若いアーティストの作品がかかっている。
以下、その内の何点かを・・・
作品とラベルのみを。







昔、小さいころ、セロファンを貼った立体メガネを作った。それなんだ。それをつけてくれって。





床に置かれた作品。




シンポジウム会場が写りこんでいる。


「ずれた」展のシンポジウム会場、日常の中の異空間である。
例えば今日の現実世界、北朝鮮がどうのとか、安倍晋三とトランプが電話でどうのとか、為替レートがどうのとか、日経平均がどうのとか、このような現実世界、日常空間とはまったく異なる世界である。
しかも、藝大陳列館、すべて無料。アムスのキュレーターの話も、何もかも。
文科省の肩入れがあるんだ。国立大学には特に。