ディーパンの闘い。

スリランカの内戦が終わったのは2009年。20年以上にわたりスリランカ政府軍と戦っていた反政府組織、タミル・イーラム解放のトラは壊滅した。
その戦いで妻子を亡くした男は、赤の他人の女、子供と3人、偽装家族としてフランスへ渡る。ディーパンという名で。難民である。

ディーパンは、未だ内戦が終わる前のスリランカから難民としてフランスへ渡る。
ディーパンに扮しているのは、19の時までタミル・イーラム解放のトラの戦士であったアントニーターサン・ジェスターサン。彼自身、スリランカの戦火を逃れ、フランスへ渡ってきた男。幾多の戦火をくぐってきたその顔貌。
なお、ジャック・オディアールの監督作『ディーパンの闘い』、2015年のカンヌでパルムドールを取った。『キャロル』と争い。

ディーパン、タミル・イーラム解放のトラの戦士として戦い、逃れてきたパリ郊外でも闘う。

フランスは、移民や難民に寛容な国である。
そうは言っても、人種、宗教、さまざまな問題を抱える。移民排斥を唱える極右・国民戦線のマーリーヌ・ルペンは確実にその地歩を固めつつある。

移民たちは、固まって住んでいる。
パリ市内でも北の方へ行けば、その様を肌で感じる。

スリランカで戦いを捨てた男が、パリ郊外で闘いの場に身を投じる。愛のために。
ディーパン、闘う。確とはしないがディーパン、頭に銃弾を受け死んだかもしれない。
カンヌのパルムドール作、切羽詰まった現実を、カッパ伝説に包んでくれる。