不屈の男 アンブロークン。

2年ぐらい前、いやもっと前になろうか、アンジーの映画が反日で日本での公開予定が立っていないとの話があった。昨年2月、やっと公開された。渋谷のシアター・イメージフォーラムでの公開であるから、ささやかな公開。
1936年のベルリンオリンピック、5000メートルで8位になったアメリカのアスリートの物語。名をルイ・ザンペリーニという青年。次回、1940年の東京大会ではメダルが期待されていたが、日本は戦争の時代に突入しており、東京オリンピックは中止となる。
1941年、日米開戦。ルイ・ザンペリーニは空軍爆撃手となり、戦場にある。
1943年、ザンペリーニの乗った爆撃機は零戦に遭遇、海上に不時着する。

『不屈の男 アンブロークン』、監督はアンジェリーナ・ジョリー。ルイ・ザンペリーニにはジャック・オコンネルが扮する。
ルイ・ザンペリーニの文字通りのアンブロークン、屈しない、折れない物語である。
まずは、太平洋上に不時着、ゴムボートで漂流する。47日間に亘り。当然、日本軍機に銃撃されるが、ザンペリーニは生き延びる。
47日目に日本軍に見つかり、捕虜となる。2年に及ぶ日本国内の捕虜収容所での時間が待っている。虐待を受ける。
が、ルイ・ザンペリーニ、アンブロークン、屈しない、絶対に折れない、で耐え抜き生き延びる。

アンジェリーナ・ジョリー、アンジーと呼ばれ、やや斜に構えた連中はジョリ姐と呼ぶ。
周りの者を引きこむような眼、厚ぼったい唇、えらの張ったあご、身体のあちこちに入れたタトゥー、存在感のある女性である。
そのアンジー、ジョリ姐の監督第2作。

イタリア移民の子、ルイ・ザンペリーニの感動の物語なんだ。
田舎町の悪ガキが走ることが速いことを見いだされ、ベルリンオリンピックに出、戦争が始まったので軍隊へ入り、捕虜となり、虐待され、戦後は自らを虐待した者を赦すという行為をとる。

ルイ・ザンペリーニ、日本の捕虜収容所で彼に対し病的ともいえる執着を見せる伍長・渡邊睦裕から執拗な虐待を受ける。
渡邊伍長に扮したのはMIYAVI。今、世界を股にかけるギタリスト。その演技、クール、冷たい、もうやめてくれって思う。
このこれでもかと繰り返される渡邊伍長のザンペリーニに対する虐待行動が、アンジーの映画は反日映画だ、とのことを招いたのであろう。
確かに、日本人として、日本人による虐待や残虐行動は正直言って見たくはない。しかし、歴史に目をつむっちゃいけない。
アンジー、ジョリ姐のこの作品、反日映画なんてことはない。歴史に真摯に向きあっている。

なお、ルイ・ザンペリーニを虐待した渡邊睦裕、日本敗戦後、戦犯とされたが逃走、連合国による占領が終わるまでの7年間逃げのびたそうだ。
ルイ・ザンペリーニは、1998年の長野オリンピックの聖火ランナーとして来日、2014年97歳で死んだそうだ。
生前、捕虜収容所で自らを虐待した渡邊睦裕を赦すため、渡邊と会うことを望んだが、渡邊の方がそれに応じなかった、という。
日米関係を考えると、渡邊のとった行動、残念な気がする。
恩讐の彼方であろうに。


一昨日、ドイツの元首相、ヘルムート・コールが死んだ。
身体もデカかったが、その精神がデカかった。冷戦後のドイツ統一を成した。
コールと世界を論じたゴルバチョフやミッテランといった小柄な男も思いだす。身体は小さいが、存在感があった。今の政治家に較べて、遥かに。


その何日か前、大田昌秀が死んだ。
大田昌秀、私には大城将保に繋がる。大城の遥か先輩であるが。
ヤマトに沖縄の心、琉球の拳を突きつけていた。