帰ってきたヒトラー。

「笑っちゃうけど、笑いごとじゃない」って映画。
ティムール・ヴェルメシュの原作は、ドイツ国内で200万部を売り上げた超ベストセラーだそうだ。

アドルフ・ヒトラー、1945年4月30日、ベルリンの総統本部地下壕でエヴァ・ブラウンと共に自殺した。
そのヒトラーが現代のベルリンにタイムスリップしてくる。
『帰ってきたヒトラー』、監督はデヴィッド・ヴェンド。コメディであり、恐ろしげな映画でもある。

ベルリンの公園で、その風貌、風姿がどこやらあのヒトラーに似ている男が目を覚ます。

こういう具合に。お待たせーって。

1945年に死んだはずのヒトラー、21世紀、2014年のベルリンに蘇える。
ヒトラーが帰ってきた。

ヒトラーが目覚めたのは、2014年。ヒトラー、キオスクの新聞で2014年であることを確認する。
ヒトラー、キオスクで働いたりするが、その内テレビ局のディレクターに目をつけられる。ふたりでドイツのあちこちを行脚し、その様を映像に写し撮る。
皆、2014年に蘇えった男をヒトラーのそっくりさん、モノマネ芸人と受けとっている。ヒトラーに似た男はインターネットも知り、自らの主義主張を伝えるには面白い道具だ、と感じている。何しろ弁舌には長けている。テレビ局の主導権争いにも巻きこまれる。

ドイツでも若年層の貧困問題、移民問題、流れこむ難民問題、さまざまな問題を抱えている。そのような時こそ、ヒトラーの得意とするところ。ネオナチの連中との遭遇もある。

とても巧妙なプロットが幾重にも出てくる。が、思いに残るのは、ひとりの老婆の言葉。
「その時も皆が彼のことを・・・、最初のうちは。そして全員殺された」、との。
問題は、ここなんだ。

「あんたは誰だ」、「ドイツ国民が私を選んだのだ」。
そうなんだ。ヒトラーもドイツ国民の民主的な選挙によって選ばれたんだ。ドイツ国民が選んだのである。
このこと、現代にも通じることである。
世界の指導者、金正恩(習近平もそうかな)、を除き、ほとんどのリーダーは、その国民が選挙によって選んだものである。が、民主的な選挙によってとんでもないリーダーを選ぶ、ということが起こり得る。
後でしまったと思っても、それは後の祭り。
近場では、昨日、パリ協定からの離脱を表明した男の例がある。