ヒトラーの贋札。

1945年5月、第二次世界大戦でのドイツ無条件降伏からさほど日を置かない時、モナコのカジノで大金を賭け続ける男・サリー。本名はサロモン・ソロヴィッチ、体に数字の刺青がある。ユダヤ人、ナチの強制収容所から解放された男である。
サリー、大量の贋札をドイツ降伏後の強制収容所から持ちだしていた。それを費消する。
時は遡る。
1936年のベルリン。パスポート、身分証明書、贋札、これらの贋物を作る腕のいい贋作家のサリー、サロモン、逮捕される。ユダヤ人であるから。
贋昨家のサリー、サロモン、ナチ親衛隊将校などの絵を描き、収容所の中で生き延びる。
1941年以降、マウトハウゼン強制収容所からザクセンハウゼン強制収容所へ移される。そこにはサリー、サロモンを逮捕したナチ親衛隊のヘルツォーク少佐がいた。
ヘルツォーク少佐、「ベルンハルト作戦」に関わっている。
ポンド紙幣の贋札を作り、それを流通させることによってイギリス経済、ひいてはイギリス社会に混乱を起こさせる、という密命をおびている。
腕のいいサリー、サロモン、その「ベルンハルト作戦」贋札作りのリーダーとなっていく。

『ヒトラーの贋札』、監督はシュテファン・ルツォヴィックス。実は10年前、2007年の作である。
私は今年初めに観たが、第二次世界大戦終戦後70年、ということで昨年からあちこち巡っていたものであろう。
日本は先の大戦の負の部分に正面から向き合おうとはせず、蓋をしよう、という傾向があるが、ドイツは先の大戦の負の部分も露わにしている。
ずいぶん前、ベルリンのユダヤ博物館へ行ったことがある。
ユダヤ人に対してナチスドイツが行った所業、そのことごとくがありのままに展示されていた。
翻って、日本で先の大戦を総括する博物館として思い浮かぶのは、靖国神社の遊就館である。
しかし、遊就館の展示、ベルリンのユダヤ博物館とはまったく異なる。戦前の日本がアジアの国々に与えた理不尽なことごと、罪の意識などまったくない。
日独の差、感じざるを得ない。