河瀬和世 巡回展。

時折り、駅前の商店街をはずれた住宅地の中に、食堂やお菓子屋などがあることがある。
こんなところで客は来るのだろうか、成り立つのだろうか、と思うことがあるがそれはいらぬお世話。成り立っているから存在しているのである、と得心する。
埼玉のカフェ・サイエスタもそのようなお店である。京浜東北線の与野で降り、私の足で10分ばかり。商店街からは離れた住宅街の中。

草が生えている。
自然観あふれる家が現れる。
河瀬和世巡回展のポスターがある。

バスケットにパンが入り、ワイン樽があり、カフェレストラン、パン屋さん、珈琲屋さんという小さな立札がある。
カフェ・サイエスタ、ここから入るようだ。

サイエスタ、本業は手造りパン屋さん。ワインの輸入やコーヒー屋、レストランも兼ねているが。

手造りのパン。
美味しそう。

横に和室がある。
喫茶、食事スペースであるが、展示の場でもある。河瀬和世の作品も。手前の屏風も河瀬和世の和紙をつかった作品。
その奥・・・

右側の赤い作品は、≪紅のとり≫。和紙・コラージュ。今回の河瀬和世巡回展のチラシなどに使われている作品。
左側の床の間には存在感のある白い作品がある。神への依り代を思わせる。

左の方を見る。
丸い丸窓のように見えるものも河瀬和世の和紙作品。

このもやしのように伸びている白いこよりのようなもの、神の依り代に違いない。

ねぎ。

河瀬和世、ネギやナスが好き。

実は、サイエスタのギャラリーは2階にある。
それ故、階段にこの看板。

階段を上る。
上りきったところには・・・

この作品がある。
≪水道管≫。
銀座奥野ビル501号室・Art Space RONDOの水道管である。狭い部屋にむき出しの水道管、存在感がある。河瀬和世は度々その水道管を作品化している。これは、落ちついた水道管。

河瀬和世の作品、裏返してもまた作品、というものも多い。
河瀬さん、水道管を裏返した。赤い作品が現れた。

2階のギャラリーへ入る。

多くの白い和紙が貼られた木片。

切り屑、木片、さまざまな形をしているものに和紙を貼りつける。新しき息吹を与える。
ここには317の和紙を貼った木片がある。317ってどうしてって誰しもが思う。河瀬和世さん、素数が好きなんだそうだ。
317、素数である。

河瀬和世の作品には参加型の作品が多い。
河瀬さん、どんどん触ってくれと言う。「ほれ、こうするとまた別の・・・になるでしょう」、と。

2階ギャラリーの河瀬作品。

このようなもの。

このような白く、また赤く鋭い線が見てとれる作品。

和紙ばかりじゃなく、幾つもの国の手造りの紙を味わう。
さまざまな和紙を幾重にも貼る。

最も外側の紙は、マレーシアの紙だったか。
紙、幾重にも。

「光琳ですね」、と言ったら「ハハ、解りましたか」、と河瀬さん。そりゃ分かりますよ。

タイトルも≪紅梅≫。

芸は細かい。

拡大する。
貼り残してある。至芸。

光琳に見せたい。

帰り際、カフェ・サイエスタのパン屋の壁にこれがあった。
河瀬和世、これは10年前の作品だと言う。10年前、カフェ・サイエスタが店を開いた時に贈った作品だそうだ。
こよりである。
こより、しめ縄のように玄関に置く魔除けである、と河瀬和世は言う。
だからであろうカフェ・サイエスタ、10年の間生き延び、今、芸術発信基地となっている。