去年今年。

どうなるのか分からない年が明けた。
もうすぐ今月末には、あの、まさかまさかの人がアメリカの大統領になっちゃうのだから。
最も喜んでいるのはプーチンと、「アメリカはもう世界の警察官をやめる」、と言っているトランプの言葉が実行されることを願っている習近平であろう。二人とも世界の警察官になりたくて仕方がないんだから。
就任初日に、今まで力を入れてきたTPPをぶっ潰される安倍晋三も、困った人だと思っているだろう。内心では。
そんなよく分からないことはさておいて、去年、印象に残っている場の写真を幾つか載せる。
まずはこれ。

この光景には、正直言って驚いた。たまたま橿原神宮へ行ったら行きあった。
去年6月8日のことだった。神武天皇2600年記念の国家安寧祈願祭が行われていた。去年は、神武天皇が崩御してから2600年だとのこと。その大祭なんだ、とのこと。
今年は今上天皇に関してもさまざまな動きがあるであろうが、神武天皇は九州・高千穂から東遷し、橿原で即位した初代天皇である。神話の世界とはいえ、その2600年大祭というたいへん区切りのいい時に行き当たった。興奮した。
白い装束の神職が内拝殿から出てくる。

神職の列、外拝殿を通り南神門へ消えていく。100人を超える白い列であった。気が高ぶった。
この翌日には、桜井の安倍文殊院でラングトン・ウォーナーの報恩法要へ行きあたった。これもたまたまであった。
こちらは100年に一度ではなく、年に一度の法要であるが、それでも不思議な縁というものを感じた。

久しぶりの明日香村の、こういう光景も忘れられない。
なんだ、普通の屋根じゃないか、と言われればそうである。しかし、私は、明日香村のこういう何でもない風景が好きで忘れられない。

橘寺の近く、やはり明日香村。
このような小さなトラクターで土を掘り起こしているのを見るのも好き。記憶に残る。

美術展で最も印象に残っているのは、藝大での「素心 バーミヤン大仏天井壁画」展である。
2001年3月12日、バーミヤンの東大仏は、タリバーンによって爆破された。「アッラー・アクバル」の声と共に。
東大仏と共に、その天涯を飾っていた壁画・「天翔る太陽神」も吹き飛んだ。
それを東京藝大では、高精細なデジタル化とアナログの手彩色技法などを用い復元した。
天井には、原寸大の「天翔る太陽神」が復元されている。
正面のモニターには、昨年春先のバーミヤン渓谷の光景が映されている。雪があるようだ。アフガン現地の人にカメラを託し、最新映像を日本へ、という体制がとられているそうだ。

東京藝大により復元された「天翔る太陽神」、ギリシャ、ペルシャ、インドの文明に仏教、東西文明が融合されたもの。
目の当たりにした復元されたバーミヤン石窟の天蓋壁画、去年見たアートの中で白眉。

あとひとつ、これを加える。
草間彌生のかぼちゃである。
瀬戸内国際美術展、春先の直島で憧れの黄色いかぼちゃに対面した。
黄色いかぼちゃ、今は使われなくなった古い小さな突堤に据えられていた。素晴らしい。家族連れで来ていた女性が写真を撮りましょうか、と言ってくれたのでその言葉に甘えた。
風が吹いていた。日は傾いていた。その中での黄色いかぼちゃ。
草間彌生、今年は春先から長期にわたる展覧会が国立新美術館で行われる。もちろん、それには行くが、私にとっての草間彌生は、この直島での黄色いかぼちゃ。


去年今年、新年の季語である。
虚子の句が知られる。
で、戯れ句をひとつ。
     去年今年 トランプ遊び 勝つはたれ     流山子