さいたまトリエンナーレ(7) 精緻な仮想世界。

川埜龍三というアーティストがいる。主にエッジの利いた具象彫刻を創っている。
1976年生まれであるから40歳。しかし近い将来、村上隆や奈良美智のような大爆発を起こすのではないか、との予感がある。
それはそれとし、学がない私、心地よくだまされた。

こういう作品。

<犀の角がもう少し・・・>、ってクレオパトラの顰に倣っているなって誰しもが思うよ。
しかし、そう思ってしまうのが、川埜龍三の掌に乗ってしまう第一歩。

川埜龍三、さいたまBハニワ大発掘展を行なったようだ。
さいたまBというのは、現実のさいたまをAとし、それに並立するさいたまをBとするそうだ。そのようなこと、知らなかった。

知らなかったが、埼玉からは凄い埴輪が発掘されているんだ。

こういう埴輪も。
犬であろうか動物埴輪、家埴輪、人物埴輪、鳥埴輪、・・・。

犀、サイだ。
復元された犀形埴輪。

こういう説明書きがある。

このような一画がある。

犀形埴輪を復元するために、まず1/10の模型を作ったそうだ。

それが、これ。
ずいぶん精緻にできている。

こういうパネルがある。

こういうパネルも。
学がない私、ここらあたりでやっと気がついた。こんなことありうるのか、と。
それよりも、犀が日本にいたのか、とも。
動物埴輪、大型の動物でも、せいぜい牛、馬、猪ぐらいである。犀のようにデカイのはいない。
川埜龍三にまんまと乗せられていた。川埜龍三の精緻な仮想世界に。
が、それはとても心地いいものであった。
誰しもがだまされるよ。

発掘調査現場のこういう写真があり、

こういう「発掘キャラバン隊の活動」のパネルもあるのだもの。
豊富な知識を持った考古学の専門家か、よほどヘソが曲がっている人以外はだまされる。

なるほど、なるほど、面白い。

さすが川埜龍三、細工は細かい。
が、別所沼古墳などはない。
さいトリ初っ端の第1回目に記したように、別所沼には日比野克彦の「別所丸」と「SAITORI丸」の2艘の船が浮かんでいたのみ。
別所沼、古墳はないが、川埜龍三の手にかかると1500、600年の時空など飛び越え、犀形埴輪を生み出していた。
フェイクではある。が、心地いい。

縄のれんならぬ糸のれんの向こうに、犀形埴輪が透けて見える。