袋井でインド宿。

愛野の駅まで送ってもらい、袋井へ。ホームには、昼に較べれば少ないが青いユニフォームを着たサッカーファンがいた。が、皆さんどうも元気がない。
それもそのはず・・・

翌日の中日新聞社会面。
ボブ・ディランが長い沈黙の後、ノーベル賞受け入れを表明した翌日であった。
ジュビロ磐田、その前日浦和レッズに敗れ、ヘタをしたらJ2降格も、という瀬戸際に追い詰められているらしい。ジュビロと言えば、ゴン中山のいた強い時代しか知らないが、J2への恐れなんて、時代は流れたんだ。
尚、この後最終節は勝ち、J1残留を決めたそうだ。磐田サポーターの皆さん、ホッとしているであろう。
袋井駅近くのホテル観世へ入る。能楽堂はなかったが、魅力的なホテルであった。
暫らく後、駅近くの居酒屋で夕飯。と、ヒラヒラとした服を着た女の子や、何やらガイコツ模様の服を着た男の子たちのグループが入ってきた。なるほどハロウィンなんだな、と気がついた。ハロウィンは、なにも渋谷の若い連中や、池袋の小池百合子ばかりがやっているのではないんだ。袋井の若者たちもやっているんだってことを知った。

それはそれとし、居酒屋で少し飲み食いして部屋に戻ってきてから気がついた。
部屋の壁、レンガ模様の壁紙である。
レンガ模様の壁紙のホテルに泊まった記憶はない。とても面白い。

翌朝、朝食をとりに食堂へ行く。遅い時間であったから、人は少なかった。
が、その壁・・・
漆喰にホントにレンガが埋め込まれている。

こちらも。
漆喰にレンガ。窓の切り方も面白い。インドのホテルを思い出す。
年をとり行かなくなったが、以前、インドにはずいぶん行った。さまざまなホテルに泊まってきた。
マハラジャの宮殿を改装したホテルから、インドのごく普通の人たちが泊まるホテルまで。中で私が好きだったのは、中程度ないしそれよりややグレードの下がるホテルであった。
このホテル、どことなくそのインドの中程度のホテルを思わせる。この食堂など、懐かしい思いがある。

そういえば前夜のチェックインの時である。
フロントの若い人が手続きをしている時、大きな声がした。
「あれー、同じじゃないですか」、と。
フロントの奥の方から顔面、私と同じような髭を生やした男が出てきた。年の頃は、私よりも少し若い。が、その髭、私同様白くなってきている。だから、同じと。たしかに、よく似ている。
それ以上にその装いが面白い。作務衣のようであるが、そうではない。下は袴。生地を取り寄せ、仕立てたのだそうだ。「足元は?」って訊くと、片足を持ちあげてくれた。雪駄のようなものであった。
それにしても、ホテルのフロントでユニークな和装で雪駄履きの髭老人が出てくるなんてことも記憶にない。初めてのことであった。カッコいい人物であった。
この男がこのホテルのオーナーなのだな、と確信した。

食堂の柱には、落書きのようなものも。
○通り○とか、CARMENとか、SENORITAとか、といったものが。趣がある。
インドの小さなホテルの食堂を思う。

食堂から外を見る。
小さなパティオがある。

パティオに出て中を見る。
袋井のインド宿である。

ホテル観世。
チェックイン時は暗くなっていた。朝食後、外へ出てみた。
左側に「サンガ」と出ている。この「サンガ」、漆喰にレンガの食堂の名前なんだ。
「サンガ」、仏教の僧や尼僧の集団である。僧伽。やはりインドだ。
右上の文字を拡大する。

おそらく、サンスクリットないしそれに近い言語で、「サンガ」を表わす言葉であろう。

ホテル入口へのアプローチ。
大きな木が建物の一部を貫いている。
袋井でインド宿。
久しぶりにインドへ行った気分に浸れた。