現代美術の視点展。

「現代美術の視点」、大上段に振りかぶったタイトルである。が、それだけのことはある。全国から、長いキャリアを持つ実力派の作家が集まっている。

地球堂ギャラリー、銀座8丁目。

地球堂ギャラリーでの「現代美術の視点展」へ、全国各地からさまざまなキャリアを持つ31人の作家が集まった。

地球堂ギャラリーへ入って右側。

その奥。広い。
この時であったであろうか、年配の男が入ってきた。よくしゃべる人であった。その男自身、どうも絵を描いている模様。
その男、こうしゃべる。
「絵を描くのはできるんですよ。しかし、絵で食っていくことはとても難しい」、と。
自身、絵を描いている
と思われれる男、「絵を描くことは誰でもできるんです。しかし、絵で食ってくなんてことは、とてもできません」、と話す。
以前、藝大の大学院の学生と話したことがある。
藝大へ入るのはたいへんだ。2、3年浪人しても入れるかどうか。入って、藝大を出ても、それだけじゃダメ。大学院へ行かなくちゃならない。が、誰でも大学院へ入れるわけじゃない。ごく限られた人のみ。と概ねこういうようなことであった。
ご自身、絵を描いているらしい地球堂ギャラリーへ入ってきた男も、そのようなことを言う。「藝大にしろタマビにしろムサビにしろ、みな同じ」、と。
「絵を描くことでは食っていけない人は、学校の教師になっているのじゃないですか」、と言った。「そういうこともあるが、学校の教師もたいへんなんですよ」、とその男は言う。「ま、サラリーマンみたいなものだから、あんなのもたいへんなんですよ」、とその男。
「じゃあ、あなたが思うこれからの”これはって”仕事は何なのですか?」って訊いた。
その男、こう言った。
「農業です。農業ほど日本に相応しい仕事はありません」、と。
農業か、農業を持ちだされると、困ってしまう。どうしようもなくなってしまう。
日本という国、元はと言えば、「豊葦原千五百秋瑞穂国」、「瑞穂の国」である。稲作の国なんだ。農業国である。だから、それもあながち外れてはいないが。

地球堂ギャラリー、入って左側の方。
左端に犬飼三千子の作品が見える。

犬飼三千子≪往し方≫。

犬飼独自の形と色彩、油性木版であろう。

相当なる年代を経ていると思われる地球堂ギャラリーの女性、とてもアグレッシブ。両手どころか両足の指にもネイルがほどこされている。
その女性、こう言う。
「犬飼先生には、来年も、と言われているのですが、このギャラリー、今年末で閉めるんです」、と。建築基準の法律もあって、と。建てなおすのだそうだ。
「じゃあ、地球堂ギャラリーは」、と訊くと、「もうギャラリーはやらないと思います」、とのこと。「下のauは、月○○○万なんです。ギャラリーではとてもとても」、と。だからギャラリーはやらない、と。
寂しいが、いたしかたない。

地球堂ギャラリーのガラス窓から向かいを見る。
銀座中央通りを挟んだ向かいは、SWAROVSKI(スワロウスキー)である。
右手中央より、女性の顔が見える。SWAROVSKIのガラス越しに。
美人とは思えないが、気になる女性である。追いかけた。捕まえた。
Karlie Kloss(カーリー・クロス)、今をときめくスーパーモデル。Tommy Tonがニューヨークで撮っている。
ニューヨークのカーリー・クロス、今、東京銀座8丁目の中央通りを見つめている。

銀座8丁目の地球堂ギャラリーを出た後、4丁目の方へ歩いた。
6丁目の松坂屋の再開発工事の前。
このような状況。
これはこれで、というものではなかろうか。