加藤紘一、カープ、そしてパラリンピック。

加藤紘一が死んだ。表舞台から消えて久しいが、ある種の思いがある。
保守本流、宏池会のプリンスであった。一度は総理をやらせてやりたかった男であった。
資質も持ち味もまったく異なる3人、山崎拓、小泉純一郎とのYKK、性格などが違った3人であったからかえって仲がよかったのかもしれない。YKKでは、小泉純一郎だけが総理となったが、むしろ加藤紘一の方が総理への道は近かった。
加藤紘一、総理になれた男であった。あの「乱」さえなければ。
頭のいい男であったが、感情を抑えるのが今ひとつ、というところがあったのかもしれない。目に涙をうかべ立ちあがろうとする加藤紘一を、「あなたは我々の大将なんですから、大将なんですから・・・」、と言って制止する谷垣禎一の声が耳に残る。あれから16年になる。
今、一度は総理をやらせてやりたい、という男(女でもよいが)はいるであろうか。
いない。思い浮かばない。
石破茂も、岸田文雄も、菅義偉も、稲田朋美も、やらせたいなんて思わない。一度総理をやらせたいなんて政治家は、考えてみれば非常に稀である。
加藤紘一、そのような稀な男であった。


つい先ほど、広島カープがセントラルリーグ優勝を果たした。25年ぶりのリーグ優勝だそうだ。
野球というもの、ほとんど見ない。が、今日は久しぶりで見た。広島カープがぶっちぎりで首位を走っていたのは知っていた。で、今日の巨人戦で優勝を決める、と。
相手の巨人もカープ優勝のおぜん立てを作っていた。坂本の2ランで先制してと。東京ドームを赤く染めていたカープファンの皆さん、ンンッって思ったんじゃないか。さすが巨人。野球は巨人である。勝つも負けるもツボを押さえている。
監督の緒方が宙に舞い、黒田が宙に舞い、最後に新井が宙に舞った。
今日のゲームで投げたのは黒田。昨年、メジャーからの20億のオファーを断り、その1/4の年俸でカープへ帰ってきた黒田の存在が大きい。
NHKで解説していた大野豊、解説者というよりはカープファンのようなことを語っていた。幾つもの場で。カープの25年前の優勝メンバーである大野、いたしかたないか。さほどイヤミに聞こえなかったし。
久しぶりに見た野球、面白かった。カープの優勝も。
衣笠祥雄の話も聞きたいな。



久しぶりで見た野球も面白かったが、パラリンピックもそれ以上に面白い。
一昨日、開会式の途中で眠くなって途中で打ち切った。その後を続ける。

開会式の入場行進で、それぞれの国名が書かれたジグソーパズルのピースの裏側には、リオパラリンピックに参加している全選手の顔写真がある。
それで組み立てられたジグソーパズル、心臓となる。

その後、真っ赤に染まる競技場。

パラリンピック旗が入ってきた。

パラリンピックの旗を持っている男の前に、10歳前後の子供がいる。
それぞれ障害を持つ子供のようだ。

旗の下から見る。
障害を持っている子供たち、それぞれ後ろの男と靴が繋がっているようだ。
NHKの中継ゲストの蜷川実花、涙を流していた。
ドライ、クールなイメージがある蜷川実花をしても涙が流れる。

競技場へ現れた最初の聖火を持ったランナーは、腕がない人であった。
4人のランナーによって聖火は引き継がれる。いずれもブラジルが誇るランナーばかり。
2番目に聖火を引き継いだ人は、杖を突きよたよたと歩く。雨が降ってくる。
過去に多くのメダルを取ったこの女性、足を滑らせ転ぶ。
一瞬、演出かな、と思った。しかし、そうではないらしい。降りだした雨に杖をついた女性、足を取られてしまったようだ。
係の人、この女人を引き起こす。杖をついた女性、ヨタヨタとした歩みながら、次のランナーに聖火を引きつぐ。3人目のランナーは視覚障害のランナーであった。
その人から4人目、最終ランナーへ聖火は引き継がれる。
その前後であろうか、パラリンピック委員会の会長やリオ市長やその他の人たちの挨拶があった模様である。しかし、私が見ていたのはライブではなく録画。そのようなあってもなくてもいいようなものは、すべて切り取られていた。
それでいい。

最終ランナーは車いすのランナー。
どのように聖火台へ点火するのか。いくつかの仕掛けはある。

が、点火。

オリンピックの時もそうであったが、点火された聖火、太陽のような中でどんどん上へと上がっていく。
人々は踊る。

入場行進の時、各国の国名が書かれたジグソーパズルのピースを持っていた女性たち、その衣装には赤と青の曲線が描かれている。
この赤と青の曲線、血液が流れる血管なんだ。
赤い曲線は動脈。青い曲線は静脈。シンプルと言えばとてもシンプルである。
しかし、リオパラリンピックの開会式、オリンピックの開会式もそうであったがとてもいい。
先端技術など何も使われていない。自然な能力を使っている。人間が本来持ち備えた力を使っている。
さらにさまざまな障害を受け入れて。それが自然に。

雨が降っている。

リオパラリンピックの聖火は燃える。
柔道や陸上などの競技が始まっている。が、それらは明日にする。だんだん溜まっていってしまうが。