しあわせへのまわり道。

不良ジジイ・ヴィンセントが住んでいるのはブルックリン。ニューヨークではあるが、マンハッタンからはイースト川を渡った川向うである。
が、売れっ子の書評家・ウェンディは、マンハッタンのアッパー・ウェストサイドに住んでいる。
アッパー・ウェストサイド、ジョンとヨーコが住んでいた、そしてジョンがその前で殺されたダコタ・ハウスもある地域。マンハッタンでも超高級地である。
ウェンディ、何もかも順風満帆だったんだ。ところがである。長年連れ添った亭主が浮気をし、浮気相手のもとに去ってしまう。仕事にかまけて亭主のことは二の次となっていたのか、と思うが後の祭り。
こういうことあるよな。
いきなり困ったことがある。田舎住まいをしている一人娘がいるのだが、そこへ行くこともできない。今まで運転手役をしてきた亭主がいなくなってしまったので。ウェンディ、運転免許なんてものを持っていないんだ。

で、ウェンディ、たまたま乗ったタクシーの運転手に運転を教わることにする。
ニューヨークのイエローキャブ、アジア系の運転手も多い。
ダルワーンという名の運転手もインドからニューヨークへ来た男。大きなターバンを巻いたシーク教徒である。ダルワーン、母国を離れアメリカへ亡命してきた教養豊かな男なんだ。ウェンディもアメリカの知識人であり豊かな感性を持っているが、ダルワーンの言葉、ウェンディの心に影響を及ぼす。

『しあわせへのまわり道』、原題は”Learning to Drive”、「運転を習う」というもの。

売れっ子書評家ではあるが亭主に逃げられたウェンディ、新しい生き方にチャレンジしていく。
まさに<新しい挑戦に遅すぎることはない>、である。
監督は、イサベル・コイシェ。とてもしなやか。
主役の二人は、ウェンディに扮するのはパトリシア・グラークソン、ダルワーンにはベン・キングズレー。
そのバックグラウンド、人種も文化も宗教も経てきた道も、何から何まで異なるウェンディとダルワーン、共に学ぶ。その比率はウェンディの方が大きいが。

ダルワーンのサイドストーリーもある。それも含め、人生を学ぶんだ。
とても心が温かくなる。
心が豊かになる。
こういうアメリカ、トランプとは異なる人たちなのだが。
しかし、どうもそうではないらしい。

それにしてもニューヨーク、いきなりタクシーを使った路上教習なんて危なくないのかな。


このこと、昨日記そうと思っていた。
が、昨日、とてもそのような状況ではなかった。
日中、高尾の東京霊園へ墓参りに行っていた。
学生時代の友人・じゃこめてい出版の青木が死んで今年が20年となる。このところのメンバー何人かで墓参りに行った。

遅れていた関東地方の梅雨明け、昨日であった。
いや、高尾の東京霊園暑かった。空もピーカン。青い空ばかり。
かろうじて雲が出ているところがあった。
それがこれ。
4時前、立川の居酒屋へ入った。
20年前、青木が階段から落ちて死んだ日、その少し前まで久木と飲んでいたという居酒屋である。
ずいぶん飲んだ。映画の話もした。
久木や私から10ばかり若いちかちゃん、いや、ものすごく映画を観ている。子供の頃、昔の東映や大映の映画を。家が商売をしていたので、映画の切符をいっぱい貰ったそうだ。錦之助、橋蔵、ゾックときたのは市川雷蔵であったそうだ。
「もう一杯」が得意の久木の仕切りで、ずいぶん飲んだようだ。ようだって、どうもそのようだ。
歌の話にもなり、カラオケに行くこととなった。
場所は、ずいぶん酔っぱらっているちかちゃんの近所がよかろう、と。久木、その近辺の事情通に電話した。代々木の駅前にカラオケがある、とのこと。そこへ行くこととする。

「カスバの女」、「圭子の夢は夜開く」、これは私。一番若いNさんは荒井由実の歌を歌った。私は知らない歌。久木も歌った。酔ってフラフラしていたちかちゃん、「リンゴ追分」を歌った。ひばりそっくり、気合が入っていた。
ぼんやりとしているが、この場面は「寒天椿」と見てとれる。
「わさび沢 隠れ径 小夜時雨 寒天椿」、石川さゆりが歌う吉岡治作詞の一節。
石川さゆりが歌う「天城越え」である。酔ってグデーングデーンのちかちゃん、腹から歌っていた。
そんなこんなで、昨日フーラフラで帰ってきた。ブログを記すような状態ではなかった。


昨日、アメリカ民主党大会最終日。
ヒラリー・クリントン、大統領選候補の受諾演説をしている。
しかしヒラリー、現民主党政権を引き継ぐ、というところに苦しいところがある。客観的に見て、無茶苦茶なことを言っているドナルド・トランプの言うことがアメリカ国民の心にストンと落ちるようだ。
アメリカ国民の70パーセントは現状に不満を持っている、ということのようであるから。
特にプアー・ホワイトとまでは言わないまでも、白人の労働者層、その将来をトランプに託している。
トランプ現象、日本にとってばかりじゃなく、世界にとってもヤバイことなんだが、それをどうこうするのはアメリカ国民、私たちはどうしようもない。


民進党代表の岡田克也、次の代表選へは出ないと表明した。
あんな迫力のない党首、身を引いて当然である。