若冲展狂騒曲。

少し油断していた。
4月中に行けばよかった。が、行ったのは、世間ではゴールデンウイークと言われる頃であった。

東京都美術館での若冲展、5月5日の昼過ぎに行った。
動物園の方から行列ができていた。待ち時間50分との看板があった。今の私、50分立ち続けるのはきつい。翌日の6日は週末の金曜日、夜間開場がある。通常人気の展覧会でも金曜夜間は狙い目である。翌日夜間に行くこととし、この日は帰る。
翌日6日、夜6時半ごろ都美術館へ行く。具合のいいことに雨も降っている。こりゃいいぞ。ラッキー。

しかし、都美術館の方へ行くと、なんと雨の中多くの人が並んでいる。
待ち時間は、またも50分。諦めて帰った。居酒屋で少し休み。

生誕300年記念の今回の若冲展、充実したものであることは事実である。
皇居、三の丸尚藏館の≪動植綵絵≫30幅、京都・相国寺の≪釈迦三尊像≫3幅、その他これって若冲が集合している。
もうひとチャレンジしてみよう、と翌週のウィークデーにまた行った。2時半ごろ。

ところが、都美術館の前ずーと人の列が続いている。

なんと待ち時間120分、となっている。


チケットを買うにも時間がかかる。それから並んで120分である。
5時までに並んだ人は、入ることができる。5時前に戻ってこよう。東博で時間を潰すことにした。東博、あちこちにソファがある。普段から休憩場所としても利用しているし。

4時半すぎ東博を出、都美術館の方へ戻った。
行列はだいぶ短くなっている。しかし、それでも待ち時間80分。諦めた。
若冲の作品は、今までにも観ている。ずいぶん昔であるが、皇居の三の丸尚蔵館での≪動植綵絵≫の特別展覧を観に行ったこともある。

探したら、この図録が出てきた。
昭和46年9月、東京国立博物館・東博で催された「若冲 特別展観」の図録である。
B5判、106ページ。定価350円、と奥付にある。昭和46年、今から45年前である。
巻末に「伊藤若冲の生涯とその画業」という解説がある。筆者は小林忠。今回の若冲展の監修者である小林忠である。45年前の小林忠、東大を出、東博へ入って数年経ったころ。先輩もいたであろうに、そのころから若冲展を仕切っていたんだ。

45年前の東博での「若冲 特別展観」の図録、10ページにみたないがカラーページもある。
トップは、≪動植綵絵≫中のこれっていう≪群鶏図≫。

それより、図録にこのようなものが挟まっていた。
国立博物館ニュースの昭和46年9月号。第292号、タブロイド4ページ。定価一部20円となっている。若冲展に多くのページを割いている。

「若冲展鑑賞の手引き」もある。
なお、最新の東京国立博物館ニュースの2016年6−7月号は、第737号。A4判16ページ、無料であるが、45年前から号数は続いているのであろう。

今回の若冲展、入場者は44万人に達したそうだ。これらの人たち、気力体力の充実した人たちである。
私は、3度行ったが諦めた。私のような人は多かったのではないか。
若冲展の人気は沸騰していた。”アンディ・ウォーホル(?)もビックリ”のギャラリーGKにもそのポスターが貼られていた。
私は、待ち時間50分や120分、80分の数字を見て帰ってきた。ところが驚くべきことに、待ち時間240分とか、320分ということもあったようだ。4時間、5時間待ちである。まさに「若冲展狂騒曲」。
なんとかならないか。
問題のひとつは、これだけの展観、その開催期間がわずか1か月であることにある。
「ひと月限りの、この世の楽園」って、それはそれで確かであろう。が、そうは言ってもそれはないよ、でもある。
宮内庁その他厳しい相手方であるが、借入れ期間を今しばらく伸ばす努力が必要であろう。
さらに、多くの人が述べていることであるが、何時間も並ばせることではなく、整理券を出すべきである。先般の、直島の地中美術館のように。
たとえ入館が2時間、3時間後であろうとも。その際、近所の美術館や博物館の割引入場券を渡せばいいのじゃないか。
近くには、東博もあれば科博もあるし芸大の美術館もある。国立西洋美術館もあれば上野の森美術館もある。久しぶりで動物園へ、という人もいるかもしれない。そのような施設の割引券を出せばいい、と思うのだが。
で、2時間か3時間後に戻ってきてもらう。
今後のこともある。
”狂騒曲”を繰り返さないためにも、整理券方式、検討されるべきではないか。