エヴェレスト 神々の山嶺。

エヴェレストへの初登頂は1953年5月29日。イギリス遠征隊のエドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイが成し遂げた。公式にはそうである。
それより30年ほど前の1924年6月8日、やはりイギリスのエヴェレスト遠征隊のジョージ・マロリーとアンドリュー・アーヴィンは、エヴェレスト頂上へアタックしていた。が、頂上直下で行方が分からなくなる。ジョージ・マロリーの遺体が発見されたのは、行方が分からなくなってから75年後の1999年。
問題は、マロリーとアーヴィンは、はたしてエヴェレスト登頂を成し遂げたか否か。登頂後の遭難か、登頂前か。エヴェレストへの初登頂者は、ヒラリーとテンジンではなく、マロリーとアーヴィンなのか。
今もって、その解は出ていない。、マロリーが持っていたカメラが見つかれば、ということなんだが。

暫らく前の近所のシネコンには、このようなスタンディが。
「超えろ! 限界の、その先へ」、と記されている。

『エヴェレスト 神々の山嶺』、原作は夢枕獏、監督は平山秀幸。
「標高8,848M、氷点下50℃、極限の世界に挑む」、とある。
カトマンドゥの雑踏の中を山岳カメラマンの男が彷徨している。岡田准一が扮する深町誠。
カトマンドゥには、古道具屋や雑貨屋や本屋など面白い店がいっぱいある。もちろん日本人を含めた外国人相手の店である。
深町誠、そのような一軒の店に入る。レンズはひび割れているが、一台の古いカメラが目に留まる。ヴェスト・ポケット・コダック。深町、ひょっとしてと思いその古いカメラを買い求める。マロリーが持っていたものではないか、と思い。
幾つかの曲折があり、その古いカメラはアン・ツェリンという老人とビカール・サンという男の手に渡る。ビカール・サンという男、エヴェレスト遠征の途次、隊の方針に合わず仲間から飛び出した男・羽生丈二、日本人なんだ。阿部寛が扮する。羽生丈二、天才的なクライマーではあるが、人間としては嫌なヤツ、という登山家たちが多い。
羽生丈二、日本の登山界から姿を消してから何年も経っている。が、生きていた。遭難したが、アン・ツェリンに助けられ、今ではアン・ツェリンの娘と結婚し、子供もいる。
山岳カメラマンの深町誠、ヒマラヤ山麓で暮らす羽生丈二を探し当てる。

『エヴェレスト 神々の山嶺』、大本は夢枕獏の小説である。フィクションではあるが、モデルとなっている人たちはいる。
山岳カメラマンの深町誠、日本の山岳界からは姿を消した羽生丈二がこういうことを企んでいることを知る。
それは、「エヴェレストへの冬季、南西壁、単独、無酸素登頂」。
何ということか。

羽生丈二の人間性を表す日本での模様もある。イザとなり、2人とも助からないということになった時、ザイルパートナーのザイルを切り自分ひとりが助かる道を選ぶか、といったこと。
羽生丈二、「オレは切る」、と公言していた。しかし、実情は・・・でもある。

岡田准一と阿部寛、その演技、なかなかのものがある。
阿部寛扮する羽生丈二、エヴェレストの「冬季、南西壁、単独、無酸素登頂」へ挑む。
が、頂上直下で阻まれ、死ぬ。
カメラマンの深町誠が、羽生丈二の遺体を見つけた映像が凄い。
凍りついた羽生丈二、その目は見開かれている。何分にも亘って瞬きをせず見開かれた目。羽生丈二に扮した阿部寛の演技、見ものである。

本作、エヴェレストの標高5200メートルで撮影されたそうだ。富士山よりはるかに高い所である。
エヴェレストの光景、それはそれで素晴らしい。美しい。
しかし私には、『エベレスト 3D』に比べて、はるかに多く出てくるカトマンドゥ市内の雑踏の映像が懐かしい。カトマンドゥには4度行っている。
旧王宮前のダルバール広場、インドラ・チョーク、タメル、・・・、カトマンドゥのあちこちの雑踏が出てくる。
この作品、昨年3月から4月上旬にかけて撮影されたそうだ。
その後、4月25日にネパールは大地震に襲われた。ダルバール広場もインドラ・チョークもタメルもその他の地区も、カトマンドゥの町は手酷い被害を受けた。
そういうこともあってであろう、この作品、地震の被害にあう前のカトマンドゥの街並み、その雑踏の様をこれでもか、と組み入れてくれている。
とても懐かしい。
最後に訪れたのは10年近く前。今一度訪れることはあろうか、な。