ギリシャに消えた嘘。

フェデリコ・フェリーニの『甘い生活』は1960年の作であるが、同じ年ルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』も公開されている。ついでにシャーリー・マクレーンがらみで言えば、ビリー・ワイルダーによるマクレーンとジャック・レモンを使ったしゃれた作品・『アパートの鍵貸します』も1960年の作である。
それはそれとし、『太陽がいっぱい』である。
アラン・ドロン、モーリス・ロネ、マリー・ラフォレ、男二人に女が一人の物語。金持ちのドラ息子と貧しい若者。男と男、男と女。殺しがあり、最後に完全犯罪が覆る。心理の深淵、男と男の間にあるというお話。
ところで、日本時間では明日午前中になるが、アカデミー賞の発表、授賞式がある。
トッド・ヘインズの『キャロル』でのケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが主演女優賞と助演女優賞にノミネートされている。主演と助演となっているが、二人とも主演である。どちらかが取るのじゃないか。それよりも、女と女の物語なんだ。女と女が惹かれあう。その深い心理の襞ったら、という作品。
何を支離滅裂なことをとも思われようが、その『太陽がいっぱい』と『キャロル』のことなんだ。
この二つの作品の原作者は、パトリシア・ハイスミス。
男と男、男と女、女と女、ハイスミスの手に掛かると、「ヘー、そうか、そうなのか」ということになる。心の奥底の襞々が振動する。
イラン出身のホセイン・アミニによる『ギリシャに消えた嘘』も、パトリシア・ハイスミスの『殺意の迷宮』を原作としている。

『ギリシャに消えた嘘』、アテネからクレタ島、そしてイスタンブールへ。
主演はヴィゴ・モーテンセン。アメリカの役者としてはやや変わった立ち位置にいるが、それであるからこその存在感がある。

パトリシア・ハイスミス原作。これが肝要。

アクロポリスの丘に、夏のスーツをビシッと決めた男と連れの女が来る。その実は、投資詐欺の実行犯である。

カモを探していたアメリカから来たガイドの若い男、いかにも金がありそうなこの二人に声をかける。
こうして物語は始まる。
思いがけず殺人事件が起こる。
若い男は殺人を犯した金のありそうなアメリカ人を助けることとなる。連れの若い女に気があるようでもある。しかし、それだけではない。殺人を犯したアメリカ人に父性を感じるのだ。
男と女の関係がある。。そして、男と男、いや、息子と父親の関係がある。パトリシア・ハイスミスの物語、とても複雑なんだ。

さらなる殺人事件も発生する。偶発的なものであるが。
逃げる。
ブダペストへと言って7おきながらイスタンブールへ。