トレヴィの泉で二度目の恋を。

夜だ。妖艶なアニタ・エクバーグがトレヴィの泉に入っていく。続いてマルチェロ・マストロヤンニも。ローマへ来たハリウッド女優とこれぞイタリア男の典型という二人が、トレヴィの泉で戯れる。フェデリコ・フェリーニによる名画・『甘い生活』の世に知られたシーン。1960年の作であるから、56年前の映画である。
エルサという名の70代半ばの老女は、自分もトレヴィの泉でアニタ・エクバーグのようなことがしたい、と思い続けている。

『トレヴィの泉で二度目の恋を』、<シャーリー・マクレーン映画デビュー60周年記念作品>とある。
1934年生まれのシャーリー・マクレーン、70代半ばのアグレッシブなバアさま・エルサに扮する。1929年生まれのクリストファー・プラマーが扮するのは、80歳の偏屈なジジイ・フレッド。

『トレヴィの泉で二度目の恋を』、監督はマイケル・ラドフォード。
80代となる名優二人を使い、心に残るラブストーリーを紡いだ。

トレヴィの泉。
フェリーニ作品のアニタ・エクバーグのようなことができない普通の人たちは、後ろ向きになりコインをこの中に投げ入れる。私も二度投げ入れた。
それよりも、エルサとフレッドのことである。

フレッド、少し前に長年連れ添ったカミさんを亡くした。一軒家よりはアパートの方がいいだろう、という娘の意向で引っ越してきた。元よりのカタブツであるようだ。偏屈極まりないジジイである。
それに引き換え隣のエルサ、陽気でアグレッシブ。いつかトレヴィの泉でアニタ・エクバーグのようなことをしたい、と考えている。

エルサ、アタックを掛ける。偏屈ジジイのフレッドに。
周りの連中、子供や孫たちは、やはり驚く。いったいどういうことなんだって。

そんなことにはおかまいなし。
<恋をするのに遅すぎることなんてない。人生を楽しむのは自分次第−>ってこと。
しかし、現実には人生の終焉が迫っているんだ。エルサの身に。
そうではあるのだが、洒落てる、このラブストーリー。