ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏。

”これぞロシア”という世界に冠たるものが二つある。
そのひとつは、4日前のパリ、そして今日もパリの北、サンドニでの銃撃戦でテロリストが用いたAK47・カラシニコフ自動小銃である。この6〜70年、革命家であれテロリストであれ彼らが身につけたのは、常にカラシニコフ。
そして、あとひとつは、ボリショイである。パリのオペラ座、ミラノのスカラ座、ロンドンのロイヤル・オペラ劇場、ベルリンやウィーン、プラハ、ブダペストのスターツ・オパー(国立オペラ劇場)、素晴らしいオペラ、バレエの殿堂はあるが、モスクワのボリショイ劇場はまた格別な存在。殊にバレエにおいて。
このドキュメンタリー映画の初めの方でメドヴェージェフが言う如く、まさに「ロシアの切り札」である。

渋谷Bunkamuraル・シネマ、看板をイーゼルに乗せている。

『 ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏』、監督:ニック・リード。ボリショイの内部に踏みこんだドキュメンタリー。

バレエが好きである。
以前、欧州へ行っていたころは、夜はあちこちの劇場へ行っていた。

ロシアという国、さまざまな賓客をボリショイへ招く。
この映画でも、レーガン夫妻をゴルバチョフがエスコートしている場面、エリツィンがエリザベス女王をエスコートしている場面が出てくる。
まさに、メドヴェージェフが言うようにボリショイ、ロシアの切り札である。
一度だけであるがボリショイへ行ったことがある。ソ連崩壊の翌年であるからもう20年以上前。その夜、舞台正面のバルコン、貴賓席には丹下健三夫妻が座っていた。エスコートしているのはロストロポーヴィッチの奥さん、ということであった。

2013年1月の深夜、ボリショイ・バレエの元スターダンサーにして現芸術監督であるセルゲイ・フィーリンが襲われる。覆面の男に硫酸をかけられる。顔面に。
右の写真のようになる。
犯人は、ボリショイ・バレエのダンサー。さまざまな軋轢がある。

上は、傷が癒えたセルゲイ・フィーリン。下の左は、ボリショイの総裁・ウラジミール・ウーリン。
セルゲイ・フィーリンとウラジミール・ウーリン、バレエの現場のトップとマネジメントのトップ、この以前から折り合いが悪い。
なお、右下は、ボリショイ劇場である。ロシアのボリショイ、世界のボリショイ。

現場のバレエ・ダンサーたちからも、歯に衣着せぬ言葉が飛び出す。

ボリショイ、まさに退廃と悪徳のバビロンに擬せられておかしくない。
そうではある。
が・・・

『白鳥の湖』、『ラ・パヤデール』、・・・、得も言えぬ映像が。

この凛とした顔貌、何と言おう。

ただ、美しい。