王妃の館。

パリ、ヴォージュ広場に「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ(王妃の館)」という名のホテルがあるそうだ。名が示すように由緒正しき五つ星である。しかし、その内情は厳しい模様。
片や日本に、倒産寸前の小さな旅行会社がある。
この両者が手を組む。そんなことあり得ないだろうと思われるのだが、そういうお話が進む。

『王妃の館』、監督:橋本一。
であるが、原作:浅田次郎、主演:水谷豊の二枚看板が売り。
私は見てはいないが、水谷豊の当たり役に何々右京というものがあることは知っている。水谷豊扮するこの映画の主人公の名も北白川右京、奇しくも同名である。

ヴォージュ広場の五つ星ホテルと日本の小さな旅行会社が企むことは、ホテルの部屋の有効活用である。ありていに言ってダブルブッキング。一部屋を二重に貸す。表と裏の二組に。
「憧れのシャトー・ドゥ・ラ・レーヌに泊まる10日間の旅」のポジツアー、つまり表のツアーは、旅行代金200万円の豪華ツアー。同名のネガツアー、つまり裏のツアーは、旅行代金29万8000円の格安ツアー。
この二組のツアーを同時に泊めようって企み。ウソっぽいことこの上ない。

パリには昔の貴族の館を改装したホテルがある。大ぶりではないが、趣深くとてもシック。
この佇まいも、そのよう。

北白川右京、天才小説家だそうだ。が、どうもスランプに陥っている模様。
右京、何かが降りてくると、「王妃の館」のスイートルームでペンを持つ。ヘンな奴。

倒産寸前の旅行会社の女社長が添乗員を務める、代金200万円のポジツアーの皆さん。右京の他には、どこかワケありの若い女、それに成金実業家とクラブホステスのカップル。
左は、ヴェルサイユの鏡の間。右は、セーヌ川クルーズ。
それにしても、右京先生のファッション、これはないだろうという代物。どこをどうすりゃこういうモノが着れるんだ。嫌みの極み。
それに比べりゃ、成金実業家とクラブホステスのカップル、ファッションばかりじゃなくそのセンス、ダサいものではあるが、憎めなく可愛げがあった。
なお、倒産寸前旅行会社の社員に引率された格安ツアーの方の皆さまも、それなりにワケありである。
右京を追いかける文芸誌編集者の男と女、カタブツの警官とショーパブのオネエ、それに元詐欺師。
それはそれであるが、映画自体はなんじゃこれってもの。

これもなんじゃこれってもの。
右京、17世紀フランスの物語を書いている。ルイ14世、その寵姫・ディアナ、そして彼らの息子・プティ・ルイ。
タカラズカの世界であろうが、モンゴリアンがフランス人に見えるか。なんじゃこれも極まれりって映画。