銀座6丁目新保ビル2・3階。

2週間ほど前、犬飼三千子から来た封筒には、3枚の展覧会案内が入っていた。今週同時期のグループ展の案内が2枚、月末の小品展の案内がひとつ。
銀座6丁目新保ビル2階、画廊るたんでの「先鋭新象作家展」が、そのひとつ。

新象作家協会所属の作家の中から、先鋭的な作家を選んだ、ということであろうか。

犬飼三千子の作品は、向こうにある。右側の作品も面白そうだ。

犬飼三千子作≪往にし方≫。
犬飼、このタイトルがお好みだ。油性木版。

不思議といえば不思議なフォルム。
それよりも、なんとも不思議な色づかい。赤紫って、とても恐ろしい色である。ヘタをしたら、ドボンとなる。でも練達の犬飼三千子、寸止めの赤紫をくりだしている。

画廊にいた女性がお茶を出してくれた。
「出展されている方ですか」、と訊いた。「はい、私の作品はこれです」、と言う。犬飼三千子の右側のこの作品であった。
小林千晶作≪発生≫。
「顔料はアクリルをお使いですか?」、と訊いた。「いえ、アクリル・メディウムで線を描き、色は水彩絵の具を使っています」、とのこと。
「アクリル・メディウムって?」、と訊いた。「セメダインの透明なようなものです。ストリング・ジェル・メディウムっていうんです」、と小林千晶さんは応える。

「ストリング・ジェル」って、この少し盛りあがっているような線なんだ。

それに水彩、面白い。

相本みちるさんの軍手作品もあった。
相本みちる作≪ミケランジェロ≫。
モノトーンの軍手、モノトーンであるが故に、その質感、深い。

面白い作品があった。
安藤イクオ作≪文字はアートだ≫。
絵画と文字のコラボである。おそらく、アクリルで描いた上に、毛筆を走らせている。達筆と言おうか、能筆と言おうか、優美な筆が走っている。
   めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に
     雲がくれにし 夜半の月かな
        紫式部
確かに、文字はアートである。紫式部の創作もまた。

画廊るたんを出た階段の横だったかエレベーターの横だかに、このようなものがあった。
画廊るたんは2階である。3階のギャルリー志門で「文学と版画展」が催されている。「文学へのオマージュ」とのサブタイトルも。
3階へ行く。
ギャルリー志門へ入る。ギャラリーの人はいないようだ。
「文学と版画展」、版画作家が、これという作家の作品の表紙などを描く。エッジの利いた版画作品が並ぶ。版画であるが、木版やリトグラフではなく、エッチングに類するものが多い。
版権問題がある故、撮影は禁止、とのことが記されている。そうであろう。
その内、ギャラリーの人が戻ってきた。
とても面白い。「作品は撮らなくてもいいが、せめてこのタイトルだけでも撮ってはいけないでしょうか?」、と訊いた。

「それはかまいません」、と言ってくれ撮ったのが、これ。
ギャラリーの人、「作家の許可さえ取ればいいんで、これという人がいれば作家に電話で問い合わせますが」、と言ってくれる。
私の雑ブログ、それほどのものではない。その言葉のみ、ありがたく受けとった。

この展覧会の案内ハガキを戴いた。これは載せてもいい、とのことで。
ヘルマン・ヘッセ、ポール・オースター、辻邦生、J.L.ボルヘス、皆さんビッグネームだ。
名前は知るが、作品は読んでいない。読んでいるのは、辻邦生の『安土往還記』ぐらい。ギャラリーの人にそう言うと、「私も読んでいないのが幾つも」、と。
それはそうと、それぞれの作家へのオマージュを捧げた版画作家、それぞれ深みのある場へ。


一昨日、二科展の後、六本木の居酒屋・松ちゃんの出入口にある一枚板について、高橋の言葉を記した。昨日、高橋からこういうメールが来ていた。コピペする。
   < 昨夜の流山子拝見いたしました。
郄橋の発言ちょっと気になって調べたのですが、
80万と言った平板は50〜60万くらい。
100万の方は80万くらいか.....。
酔いに任せて高値ふっかけてしまいました。
すみません。>
という。
80万が50〜60万にしろ、100万が80万にしろ、大したことはない。
一昨日の私たち10数人であれば、2、3週間、毎日松ちゃんへ行っても、一枚の板で賄える。