ジョン万次郎と吉田さん。

先月末、こういうメールが来た。
<・・・・・私は先月19日に米寿を迎えましたが、・・・・・。
それでも、数年来計画していました「中浜ジョン万次郎の勇気と努力の物語」と題する日英対訳の絵本をようやく発刊し、・・・・・。
・・・・・特に、学生や若者が、英語を正確に聞き取ったり発音できるように、スマートフォンやコンピューターで物語を英語で聞くことのできる音声ファイルのダウンロードサービス付きです。>、と記されている。
吉田礼三さんからのものであった。
吉田礼三さん、普段はアメリカに住んでいるが、ここ4、5年は年に2回ほど日本へ戻り、全国の小中学校でジョン万次郎についての講演をして回っている。吉田さんの言葉で言えば、「課外授業」である。
今回上梓されたのは、こういう絵本である。

日英対訳による『中浜ジョン万次郎の勇気と努力の物語 Courage + Effort of John Manjiro』。
企画:一般社団法人 ジョン万次郎に学ぶ会。著者:吉田礼三。絵:伊佐佳久。英訳:森礎人。発行所:開拓社。B5判、ハードカバー、本文カラー32ページ、頒価1800円(税込み)の絵本である。
2年半少し前、吉田さんは千葉市で一般の人たちを対象に「ジョン万次郎の勇気と冒険」についての講演を持たれた。小中学生を対象にしている吉田さんの講演・課外授業と同じ内容のものを。とても興味深いものであった。(その講演会の模様、2012年11月13日のこの雑ブログに記しております。もしお急ぎでなくお時間のおありのお方は、ご覧ください。)
そこで扱われた映像などを、今回、書籍化されたものである。対訳の英文をつけて。さらに、それの音声ファイルサービスもつけて。

こういう紙片が挟まれていた。
パソコンやスマホでのネイティヴによる音声ファイルサービス、若い人たちにはこの上ないプラスαのサービスである。

読めるかなー。少しきついかなー。
米寿・88歳になったという吉田さん、1987年、60歳の時にアメリカへ移住した。さまざまな事業をしたようだが、主たる事業はアメリカと日本の企業や人を結びつけるコンサルティング業であった。
私が知り合ったのもその頃、吉田さんからの情報で何度かアメリカへ行ったり、アメリカの企業の人を日本へ連れてきて引きあわせてくれたりした。仕事は仕事とし、仕事を引退した後もつき合いは続いた。
実は、現役の頃から、仕事の話の後などによくこういう話などをしていたからである。ハーバードへの日本人の留学生が少なくなっている。中国はもとより韓国からの留学生に抜かれている。成績も日本人よりは中国や韓国の留学生の方が上である。情けない。何とかしないと。
といったようなことを、熱く語られる。
海外に長く住む日本人、日本国内に住む人より日本のことを考えるんだ。
5、6年前であったか、7、8年前であったか、吉田さん、ジョン万次郎を助けたアメリカの捕鯨船のホイットフィールド船長のマサチューセッツの家を買いとり、博物館とした。その後、社団法人の「ジョン万次郎に学ぶ会」を日野原重明さんや橋本大二郎さんなどと共に作り、その代表理事となった。
吉田さん、こう言うんだ。
日本の近代化へ導いた先覚者であるジョン万次郎のことが、あまりにも日本では知られていない、と。だから、吉田さん、88歳になった今も、年に2回日本へ帰ってきてあちこちの小中学校を回っている。
ジョン万次郎のことを話し、君たちも世界へ出て行ってくれ、と。
私は、その吉田さんのことを、内心秘かに「国士」と呼んでいる。

絵本、少し複写する。
土佐、中浜の14歳の少年・万次郎、こうして漁に出ていたのだが、ある時遭難する。
日英対訳。左ページにルビがついた日本語、右ページに英語。その英語は、パソコンやスマホでの音声サービスつき。役立つ。

143日後、アメリカの捕鯨船・ジョン・ホーランド号のホイットフィールド船長に助けられる。

アメリカへ渡った万次郎は、ホイットフィールド船長の故郷・マサチューセッツ州のフェアヘブンで教育を受ける。
ジョン万次郎は、8年後22歳の時日本へ戻る。

ジョン万次郎が日本へ戻ってからすぐ後には、浦賀へペリーの艦隊が来る。幕末、風雲急を告げる時期である。
1860年、幕府は咸臨丸をアメリカへ遣わす。勝海舟、福沢諭吉などが乗りこんだ。そこに、中浜万次郎もいた。
<アメリカの3人の大統領が最も尊敬した日本人、中浜万次郎について>、という吉田さんの紙片がある。
<ポーツマス条約により、日露戦争を日本側に有利に終結させたセオドール・ルーズベルト第26代大統領も、幼時より少年ジョン万次郎を尊敬していたフランクリン・ルーズベルト第32代大統領も、共に、少年ジョン万次郎が10年間学んだマサチューセッツ州フェアヘブン周辺の出身でした。更に、クーリッジ第39代大統領は、建国150周年記念の時、建国以来アメリカに貢献した外国人150人の一人として、アジアからは中浜ジョン万次郎一人だけを選びました。万次郎が、日本のアメリカへの開港和親条約締結に尽力したからです>、と記されている。
確かに、ジョン万次郎のこと、もっともっと知らなきゃ。先達をもっともっと意識しなきゃ。

表4カバーの下部を複写する。
大人がジョン万次郎のことを再確認する書としてもいいが、何よりこれから世界へ羽ばたこうという若い人たち、小学高学年から中学生には是非お勧めしたい書である。
御注文は、上記宛てにハガキかファックスで、とのことである。
ご本人はもちろん、このブログ、ジジババがお読みいただいている場合には、是非お孫さんにプレゼントしていただきたい。21世紀の万次郎に。