神々のたそがれ。
昨日のルキノ・ヴィスコンティの作品『ルートヴィヒ』の元々の副題は、「神々の黄昏」。ワーグナーがらみ。
偶々であるか、「神々の黄昏(たそがれ)」と題する映像作品が創られた。ロシアのアレクセイ・ゲルマンの作品『神々のたそがれ』。
『神々のたそがれ』、渋谷のユーロスペースで、つい先だってまで上映されていた。ウィークデーの日中だというのに、ほぼ満席。今、全国あちこち廻っている。
原作のタイトルは、『神様はつらい』。
2000年から2013年にかけ、10数年をかけて創られた。多くの人がこう言っている。
立花隆は、「ゲルマンはダンテの神曲を凌駕した」、と言う。蓮實重彦は、「これを見ずに映画など語ってはならない」、と。浅田彰は、「これはたんに見るべき映画ではなく、そうやって全感覚で体験すべき映画なのだ・・・」、と。磯崎新は、「神は退位し、リヴァイアサンは到着していない。あなたは3時間、眼をそむけることもできずに、金縛りにあうだろう」、と語る。
極めつけは、ウンベルト・エーコである。
ウンベルト・エーコ、こう言っている。
「アレクセイ・ゲルマンに比べれば、タランティーノはただのディズニー映画だ」、と。
タランティーノ、ディズニー映画のガキ扱いされた。
アレクセイ・ゲルマン、何者だ。
マイナーな劇場でかかっている作品だというのに、チラシは3枚もある。
このチラシ、「空前絶後 二十一世紀 最高傑作」、と記されている。21世紀はまだ始まったばかりなのに、最高傑作なのか。常識を離れなきゃいけない。
『神々のたそがれ』、地球からは800年ほど前の惑星の都・アルカナルの物語。
その惑星に、地球から30人ばかりの調査団が送りこまれる。地球からの人間、神の如く崇めるられる。
北方ルネッサンス、ボッシュやブリューゲルの世界なのであるが、そのような世界ではない。
どろどろの泥濘に糞尿が混じる。汚いことこの上なし、という状態が続く。
不思議な世界だ。
モラルの崩壊、善悪の彼岸。
ロシアの大地の・・・
神々のたそがれ。