時計じかけのオレンジ。


キューブリック特集、他の3作が上映されたのは1週間のみ、『時計じかけのオレンジ』のみ4週間を通してかけられた。

スタンリー・キューブリック、子供のころから写真の才、飛びぬけていたそうだ。

ユートピアとは真逆にディストピアがある。
キューブリックの『時計じかけのオレンジ』、1971年の作。この看板が出ていた。
近未来のロンドンが舞台である。
その社会は歪んでいる。
悪ガキどもが悪行の限りをつくすディストピア。

興味があるのは、手当たりしだいのレイプとハンパない暴力、それにベートーヴェンのみ、という悪ガキの冒険譚。

尖がってる、とんがってる、トンガッテル。ハンパない尖りようだ。
エッジが効きすぎてる。

その内側も妖しく尖がっている。

スタンリー・キューブリック作『時計じかけのオレンジ』。
FUNNY(おもしろくて)、SATIRIC(風刺が効いて)、EXCITING(エクサイティングで)、BIZARRE(可笑しな)、WITTY(ウイットに富んだ)、POLITICAL(政治的な)、THRILLING(スリル満点の)、METAPHORICAL(比喩がいっぱいの)、FRIGHTENING(ぎょっとする)お話。
ロンドン下町の言葉コックニーに、造語であるナッドサットが重なる。

コイツが4人組の悪ガキのリーダー・アレックス。15歳。
15でこんなヤツいるか、と普通の連中は思う。
ホームレスのジイさんを、死の寸前までボコボコに叩きのめす。さらにレイプにつぐレイプ。そしてベートーヴェン。第9番。
が、この悪ガキ・アレックス、仲間に裏切られ逮捕され収監、懲役14年の刑を受ける。しかし、悪ガキはしたたか、模範囚を装う。
そのアレックス、ある実験に抜擢される。碌でもない受刑者を矯正させるための実験だ。協力し成功すれば、刑期はグンと短縮される、という実験である。

悪ガキのアレックス、頭に多くの電極をつけられ、目蓋を見ひらき固定される。
その状態で、レイプやウルトラ・ヴァイオレンスの映像を凝視させられる。ベートーヴェンの第9が流れる中で。

実験は成功する。
アレックス、暴力行為に嫌悪感を抱く。いかなる暴力をふるわれても、その挑発には乗らない。女に関しても、そう。全裸の女から迫られても興味を示さない。それどころか、嫌悪感を持つ。あれほど好きだったベートーヴェンの音楽についても同じ。嫌悪感を抱く。
アレックス、多年の刑期を残し、わずか2年で釈放される。
だがしかし、かって悪行の限りをつくした人たちと巡りあう。死ぬほど打ちのめしたホームレスのジイさんや、その目の前でレイプした女の亭主などに。アレックス、ボコボコにされる。
で、元に戻るんだ。

エッジの立ちすぎたこの作品、いろいろな人がいろいろなことを言っている。
40年以上前、スタンリー・キューブリックは何を考えていたのか。
私には、解かるようでもあり、解からないようでもある。
キューブリックと私の頭の中の差、その才のひらきに思いいたる。