アメリカン・スナイパー。

満4年となる。2011年5月2日、ホワイトハウスの地下の一室。
オバマ以下ヒラリー・クリントンその他、時の政権の主だったメンバーが見つめているモニターに映像が届いた。アフガニスタンに近いパキスタン北部に潜んでいたアル・カイーダの首領・ウサマ・ビン・ラディンを殺害した映像である。ビン・ラディンの隠れ家を急襲、殺害したのは、ネイビー・シールズ(アメリカ海軍特殊部隊)であった。
ネイビー・シールズ、選りすぐりの精鋭部隊である。9.11後、イラクへも派遣された。
その中に、伝説のスナイパー、クリス・カイルがいた。

クリス・カイル、4度に及ぶイラクへの派遣で160人を射殺した。
この作品、彼の自伝『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手』に基づいている。

クリント・イーストウッドの最新作。
今年のアカデミー賞にも6部門でノミネートされた。

イーストウッドだ。
昨日のポランスキーは81歳である。イーストウッドは、間もなく85歳となる。イーストウッド、問題作を次々と発表している。
昨年の『ジャージー・ボーイズ』から遡っても、『J.エドガー』、『ヒア アフター』、『グラン・トリノ』、『硫黄島からの手紙』、『ミリオンダラー・ベイビー』、『ミスティック・リバー』、・・・・・。
ジャンルを問わない。すべて面白い。イーストウッド、常に人間を考えているんだ。常に優しい眼差しを感じる。

クリス・カイルに扮したのはブラッドリー・クーパー。

クリス・カイル、テキサス生まれ。一目ぼれした女房と子供もいる。国を愛し、家族を愛する優しい父親だ。
その男が4回もイラクへ派遣される。射撃の腕はめっぽう立つ。仲間内からは「レジェンド」と呼ばれている。が、敵からは「悪魔」と。
クリス・カイル、何故4回もイラクへ行ったのか。何故160人もの人を射殺したのか。

ブラッドリー・クーパー扮するクリス・カイル、ライフル・スコープ(照準器)をあわせる。

敵にも凄腕のスナイパーがいる。
その名はムスタファ。
クリス・カイルとムスタファ、対峙する。その間、1920メートルの距離で。クリス・カイルの銃弾がムスタファを撃ち抜く。クリント・イーストウッド、西部劇の舞台をも用意した。その後、砂嵐の中、間一髪で装甲車へ走りこむクリス・カイル。
多くのアメリカの若者がイラクへ送りこまれた。イラクで死なずアメリカへ帰還した若者の中には、PTSDで苦しむ若者も多かった。
除隊したクリス・カイル、そのような若者をケアする活動も行っていた。が、クリス・カイル、2013年2月、元海兵隊員により殺される。亨年38。クリス・カイルの棺、米国旗に包まれ葬られる。
星条旗は多く出てくる。しかし、国威発揚ではない。クリント・イーストウッド、反戦映画を撮った。