ゴーン・ガール。

悪い女の物語である。
コワーイ女の話である。
ファム・ファタールの一典型である。
ポスターの色調も沈んでいる。

結婚5周年の記念日、妻のエイミーの姿が忽然と消える。
リビングには争った跡があり、キッチンには大量の血痕が発見される。
警察は他殺と失踪の両方の可能性を探っていくが、次第にアリバイがおかしな夫・ニックへ疑いの目を向けていく。ニック、ニューヨークでの仕事を失い、故郷のミズーリへ帰ってきている。かてて加えてニック、浮気もしている。あやしい。
メディアはミズーリの田舎町の怪事件を報道する。どんどんと、暴走状態で。
原作は、アメリカで600万部を売った大ベストセラー。その原作者・ギリアン・フリンが脚本も書いている。引きこまれる。

”2012年7月5日 木曜日 ミッシング”。エイミーに何が起きたのか。

監督は、デヴィッド・フィンチャー。
昨日のチャン・イーモウの作品も夫婦の物語。今日のデヴィッド・フィンチャーの作品も夫婦の物語。しかし、ふたつの作品はまったくその色合いを異にする。
チャン・イーモウが文革に狂わされた哀しい夫婦を描いたのに対し、フィンチャーは現代アメリカの恐ろしい夫婦の心理劇を紡ぎだした。
さて、上の写真をよく見ていただきたい。
デヴィッド・フィンチャー、そして主演の2人、ベン・アフレックとロザムンド・パイクの文字の下を。
薄っすらと二つの目が写っている。
悪い女、コワーイ女である妻・エイミーの目である。
エイミー、殺されてなんかいないんだ。リビングの争そった跡もキッチンの大量の血痕も、その他まだまだ多くの事柄もすべて自作自演。それどころかエイミー、逃走の過程で殺人も犯している。
そのことが、”大どんでん返し”ということでなく分かるんだ。自然に。監督、デヴィッド・フィンチャーの技のさえ、と言えよう。

脛に傷を持つ身であるには違いないが、夫のニック、優しいヤツなんだ。それでいいのかね、と思うくらいに。
どういうことって、その優しさ、私の理解を超えている故書きづらい。


今日、この後すぐの女子W杯のなでしこジャパンの選手が発表された。
ここ暫らくジャパン代表からはずれていた澤穂希も選出された。
澤穂希、36歳である。15歳でジャパンの代表に選ばれて以来20年、6度目のジャパン代表となる。男女を問わず初めて。
澤穂希、インタビューに応え「正直、ちょっと泣きそうでした」、と話している。
忘れてはいけない。4年前、3.11の後の日本を勇気づけた最大の功労者は澤穂希であった。
澤穂希がジャパン代表に選ばれたこと、とても嬉しい。