国宝再現。

「お前、どこが隠棲者なんだ」、と言われることもあるが、そうは言っても何やかや出歩くことが多い。この半月ばかりもあちこち出掛けることがあり、暫らくブログもご無沙汰した。
年初来の突発事があり、昨年からの積み残しにも手をつけていなかった。まず、その幾つかから日常に戻る。
今日は、昨年末の東博での「日本国宝展」の折り併催された「国宝再現 ー田中親美と模写の世界ー」。
東博では、明治5年(1872)の創立当時より模本の収集や制作を行なってきた、という。

平成館企画展示室で催された。
撮影は許されている。

≪宮女図≫。遠藤貫周模。
模本:明治時代・19世紀。原本:元時代・13〜14世紀(原本:国宝)。蜷川式胤寄贈。
なお、蜷川式胤は、<東博の創立に関わった一人で、幕末より独自に宝物調査を行い、創立時に約40件の模本を寄贈した>、という人だそうである。
それにしても、元代宮女の緋色の衣装、美しい。

≪閻魔天像≫。横山大観模。
模本:明治時代・19世紀。原本:平安時代・12世紀(原本:重要文化財)。
<模本を描いた大観は、こうした精緻を極めた古画模写による伝統的な絵画技法の習得を経て、春草とともに日本画の近代化を成功させた>、と東博は言う。

≪普賢十羅刹女像≫(模本)。
いよいよここからが田中親美の手になる模写、模造となる。
模本:大正時代・20世紀。原本:鎌倉時代・13世紀(原本:重要文化財)。
十二単衣姿の十羅刹女像、<原本が益田鈍翁に渡った際に親美は本作を模写するが、・・・・・>、と東博のパンフにある。この世界、明治以降の日本美術史を支えた数奇者の金満家の名があちこちに。

田中親美の手になる≪平家納経≫の模本。

このようなものである。

≪平家納経≫、厳王品 第二十七。田中親美模。
模本:大正〜昭和時代・20世紀。原本:平安時代・長寛2年(1164)。原本:国宝、厳島神社蔵。

模写にもこういう違いがあるそうだ。

模本と複製本にも。

≪久能寺経≫。田中親美模。
模本:昭和26年(1951)。原本:平安時代・12世紀(原本:国宝、静岡・鉄舟寺蔵)。
平安貴族、截金を施された中にいる。

≪寸松庵色紙≫(複製本)。
原本は、平安時代・11世紀の『古今和歌集』を書写した古筆切。

田中親美、書の写しも。

小野道風の写し。
原本:平安時代・12世紀(原本:国宝、西本願寺蔵)。

藤原行成卿、という字が見てとれる。藤原行成の書の写し。
ところで東博、さりげなく芸の細かいところも見せている。
「国宝再現」の催しからひと月後のこの正月、伝紀貫之の「寸松庵色紙」、伝小野道風の「継色紙」、伝藤原行成の「升色紙」の”三色紙”が、揃って展示されていた。”新春特別公開”として。
どうも東博、連続性ということを考えているようだ。月に一回とまでは言わないが、せめて2〜3か月に一回程度は東博へ来てくださいよ、と。