動きはない。

「イスラム国」が回答期限とした時刻から、さらに30時間が過ぎた。しかし、動きはない。表面上は。
官房長官も外相も「新たに報告することはない」、と言っている。しかし、主要閣僚が「新たに言うことはない」、と言っているということは、かえって何らかの進展がある、ということかもしれない。
そういう中で、またぞろ”自己責任論”が飛び交っている。
メディアでは”会社経営者”となっているが、そのHPには銃を持った写真を何枚もアップしている湯川さんには、ウーンという感じはある。どういう会社であるのか、ということも周知のことだし。
しかし、後藤健二さんの会社・INDEPENDENT PRESSのHPを見ると、後藤さんという人、どういう人かが解かる。紛争地などを多く取材している。そこの一般の人や子供たちのことを。使命感を持っている。このような人、”自己責任論”で切って捨てちゃいけないでしょう。助けなきゃ。
逆に、”首相責任論”を言っている連中もいる。
安倍晋三がエジプトで2億ドルの民生支援を表明した折り、「対イスラム国で戦っている・・・」、というようなニュアンスの発言をしたことが問題の発端である、という論理らしい。その発言がイスラム国を刺激した、というもの。この発言、確かに上げ足を取られた、と言えば取られた。しかし、安倍晋三の発言、真っ当であろう。安倍晋三が責任を取れ、なんて言っている連中など言語道断。
今日の読売新聞夕刊一面に、こういう記事がある。
<「後藤さん、湯川さん救え」 ネットで解放呼びかけ>、という見出し。
写真や映像ジャーナリストが集まる「日本ビジュアル・ジャーナリスト協会」が、「後藤さんと湯川さんを殺さないで」、と日本語、アラビア語、英語で呼びかけている。イスラム国へ発する声明、というもの。
後藤さんとも共に行動したことのある豊田直己さんが、この声明の転載、拡散を呼びかけている、という記事。声明を転載したのは、約450人、との読売の記事。
後藤さんを助けるため、私もこの声明を転載、拡散しよう、と思った。だが、やめた。
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会の人たち、豊田直己や古居みずえ関連の記述を見た。彼ら、こう言っている。
「対イスラム国の周辺国への支援2億ドルは、撤回しろ」、「中田考や常岡浩介を、仲介、交渉者として使え」、というもの。このようなこと、できるワケがない。後藤さんを助けるのはいいが、彼ら、国というものを解かっていない。
だから、私は転載、拡散することはやめよう、と考えた。転載しない。
そもそもイスラム国、元はと言えばアルカイダのイラク支部である。それがいつの間にやら、世界を相手とする存在感を持つようになった。アルカイダとも袂を分かち。
多くの人がイスラム国の越し方を語っている。何故に現在のような力を持つようになったのか、ということについて。
明治大学特任教授、というより東大名誉教授と言った方が解かりやすい山内昌之は、『文藝春秋オピニオン 2015年の論点100』( 文春ムック 2015年刊)の中で、こう記す。
<「IS拡大を招いたオバマの外交失策」>、と。
山内昌之、こう語る。
<ISがシリアとイラクで予想外の力をつけ、・・・・・、アラブ世界に政治的真空状態と権力の不均衡をもたらしたオバマ大統領の外交失策の結果に他ならない>、と。
拘束されている二人の日本人の問題、明日解決するかもしれない。そうでなければ、1年後もこの問題が、ということがあるかもしれない。
表面上、動きはない。でも、どこかで動いているのかもしれない。