「残された球数はそんなに残っていないと・・・、その中で・・・」 ・・・ 二人のサムライ。

メジャーから20億のオファーを受けながら、その1/5の年俸で広島へ戻ってくる黒田博樹、今日、自主トレの地、カリフォルニアでこう語っている。
とても味わい深い。
「この2月で40歳になります。あと何年野球ができるか分からないですし・・・・・。僕に残された球数はそんなに残っていないと思うので、・・・・・、その中で、自分の気持ちを含めて・・・・・、自分の中で納得できる・・・・・」、と。
間もなく40歳になる黒田、自分に残された球数、投手としての野球人生は限られている、と語っている。それをどう使うか。金の多寡ではない、納得のいく使い方にしよう、と考えたそうだ、黒田は。
で、まだ投げられる内に自分を育ててくれた広島カープに戻ろう、と。自分の最後は広島の地で、と黒田は考えた。
黒田の美学である。男・黒田の。
これをこそ、サムライと呼ぶべきものであろう。
土俵上の侍(サムライ)・豊真将が、今日、引退した。
傷めた右膝が完治せず、幕下にまで番付けを下げていた。涙の引退会見が行なわれた。今後は、年寄り、立田川として、後進の指導にあたる、という。
豊真将、山口県豊浦郡の出身。私の贔屓力士・豊響にとっては同郷の先輩である。豊響、こう語る。「ケガさえなければ、もっと長く取れたに違いない」、と。
豊真将、生真面目な力士であった。何と言っても、その所作が美しかった。手刀ばかりじゃなく、その礼も。大関、横綱にも見習わせたい、と思っていたのは私ばかりではなかろう。
今日の会見で豊真将、こう語る。
「最後まで、師匠に教わった自分の相撲を取りきったので、悔いはありません」、と。豊真将らしい言葉だ。
その師匠の綴山(元寺尾)、こう語る。
「弟子としては何ひとつ言うことがない。尊敬できる誇りだった」、と。
師匠がその弟子を「尊敬できる」、と言っている。そういう男なんだな、豊真将という男。きっと、いい親方になるであろう。
黒田博樹と豊真将、その人生第一幕のエンディングを考え、何かいい気持ちにさせてもらった。