LIFE!。

アメリカという国は、デカい国で人の数も多いので、いろんな人がいるんだ。
生身の人間ではなくAIと恋に落ちる男や、酒と女の日常を送るマッチョなテキサンや、おそらくその一生をド田舎で過ごしたであろう男や、酒と女に加えドラッグまみれの日常というウォール街のワルや、さまざまな人たちがいる。
中には、こんな不器用な男もいる。
人づきあいが苦手。年も年なんだが独身。シングルマザーである意中の女性がいるのだが、その想いを伝えることができない。困ったヤツだ。アメリカ人にもこんなヤツがいるんだ。

その不器用で困った男は、ウォルター・ミティっていうんだ。
LIFEの写真管理をしている。ジミと言えばジミな仕事である。毎日同じような仕事をしている。そのような人は、アメリカに限らずどの国でも多いから、それはそれでいい。
早速であるが、少し横道へ入る。
アメリカという国、デカいだけあって何でもデカかったり多かったりする。
雑誌の世界でもそう。「リーダーズ・ダイジェスト(Reader’s Digest)」など、日本からは撤退したが、今でも全世界で数千万の読者を持つらしい。「LIFE」もそう。最盛期には1000万に近い読者を持った。
しかし、アナログからデジタルへ、時代は移り変わる。巨大な「LIFE」も、1970年代、終焉を迎える。
その最終号の表紙写真のネガが見つからない、ということになる。冒険写真家・ショーンが撮った写真である。なんとー、どうするウォルター。

『LIFE!』、監督はベン・スティラー。
主人公のウォルター・ミティもベン・スティラーが演じている。

ベン・スティラーがディレクトし、ベン・スティラーが演じるウォルター・ミティ、不器用な男なんだが、実は空想癖のある男なんだ。
この場面は、ニューヨークであろうが、ウォルター・ミティ、「LIFE」最終号の表紙写真、見つからないネガを求めて飛びたつ。撮影者のショーンを追って。
北極圏のグリーンランドへ。さらにアイスランドへ。凄い映像。アイスランドの火山地帯での道路をスケボーで走る様など、イヤー見惚れる。さらにアフガンへ、ヒマラヤへ。
実は、私、絶景の海山よりは、ごく当たり前の街中の方が好きなのだが、アフガンやヒマラヤの光景、イヤーとても美しい。

「LIFE」の表紙。
JFK、マーチン・ルーサー・キング、ジョン・レノンに続いて出てきたのは、これ。ンッ、宇宙飛行士・ウォルター・ミティと記されている。右上には、”勇気ある男”とも。
見つからなかった「LIFE」最終号表紙に使うネガも、見つかる。
その画像は、ウーン何と、というもの。想いを寄せていたシングルマザーとも、ンッ、いい感じじゃないか、という状態。
アカデミー賞ノミネートにはかからなかったようだが、とても面白い映画であった。
さまざまなアメリカ人がいる。



李香蘭(山口淑子)が死んだ。
李香蘭、1929年(大正9年)、満洲で生まれた。日本人でなく中国人としてデビューした。満洲での日本の国策に沿った。
当然のこと、日本敗戦後は、売国奴、漢奸として裁判にかけられた。銃殺刑の恐れもあったが、日本人であることが証明され、日本へ引き揚げることができた。
満洲で生まれた人たち多くいる。
小澤征爾、なかにし礼、浅丘ルリ子、加藤登紀子、北見けんいち、・・・・・、穐吉敏子もそうである。
これからの10年、おそらくこれらの人たちの多くは死んでいるであろう。
これらの人たちとは比ぶべくもないが、私も満洲で生まれた。これらの人たちと同じく、近い将来死ぬであろう。
当然のことだが、満洲が遠くなる。

李香蘭(山口淑子)の本拠であった旧満洲の首都・新京(現長春)の満映へ行ったことがある。日本が敗れた後、理事長・甘粕正彦が青酸カリを浴び自死した部屋へも。
李香蘭、満洲の光と影を生きた。それだけに、現在の日中の間柄には心を痛めていたことであろう。
日本敗戦後、李香蘭が捕まり裁判にかけられた上海はもとより、蘇州へも2度行った。
You Tubeで、李香蘭の「蘇州夜曲」を何度か聴いた。
絹糸のような李香蘭の歌声を。
蘇州、おそらくもう行くことはないだろうな、と思いつつ。