早稲田美研60−70 第7回展 出品録(5)。

いつ頃からだったろうか、半年前だったか一年ぐらい前だったか、杉浦がこういうことを言いだした。絵をだったか作風をだったかは憶えていないが、「変えようと思っている」、と。
だから、今回、杉浦がどうようなものを持ってくるのか楽しみにしていた。

搬入の日、杉浦良允の作品6点、このように置かれていた。

どのように展示するか、杉浦、右に行ったり左に行ったり練っていた。

決まって、壁面へ取りつける。

杉浦良允の6点の作品、このように飾られた。
タイトルは、≪何処へ向う(A)≫から≪何処へ向う(F)≫までの6点。キャンバスにアクリル。
たしかに、杉浦良允の作品、今までのものと変わった。

これまでの杉浦良允の作品、その時々で変化はあるものの、その底に流れる基本は、三角形であり六角形であった。正三角形ないしニ等辺三角形。それが六角形となり、それらがさらに増殖していく。
ところが、この中央の2点、これは三角というよりトゲトゲだ。

先日、この作品を見た時、杉浦に「オレにはハリネズミに見えるな」、と言った。
しかし、永年杉浦の絵を見てきた者から言えば、このハリネズミ、とても新鮮な感を受ける。
躍動感がある。これも、今までの杉浦作品になかったもの。今までの杉浦作品は、整った美を追求していたように思う。整いすぎていた。正三角形やニ等辺三角形という、落ち着いた形がベースになっていたからであろう。
動きを感じるこの作品、とてもいい。

先日の杉浦、こういうことも言っていた。絵を描いている先輩に当たる人から、「これはいずれ行き詰るよ」、と前々から言われていたんだ」、とも。
そうであるからでもなかろうが、杉浦良允、今までのイメージとは異なる絵を描いた。

このようなものも。

このようなトゲトゲも。

このような作品も。

マスキングテープを使って描く手法は、今までと同じだそうだ。

同じ色も、2度3度と塗り重ねる、と言う。

この色づかいも、これまでの杉浦と違ったものじゃないか。
とても美しい。

この作品が、今回の出品作で杉浦が最も気にいっているもののようだ。
以前、杉浦のアトリエの模様をレポートしたことがある。
二人の娘が結婚した後、その部屋を改造、アトリエとした。リタイア後は、毎日そのアトリエに籠りジャズを聴きながら過ごしている、と。
上の作品、上からは緑っぽいトゲトゲが、下からは赤っぽいトゲトゲが対峙しているような作品≪何処へ向う(A)≫。描きあげるのに時間がかかった、という。
アトリエに1日に4〜5時間籠り、1か月半かかったそうだ。細かい作業だものな。

対峙する前線、緊張感を感じる。