うさぎスマッシュ(続き)。

私たちをワンダーランドへ誘う「うさぎスマッシュ」、国内外のデザイナー、アーティスト、建築家、21組の表現が展示されている。

こういうようなカテゴリー、或いはテーマで。
どれもこれも面白いんだが、全ては紹介できない。いずれもややこしいんだ。
で、あと幾つかを。

この右側の作品は・・・

「動物に生かされる人間」。
リヴィタル・コーエン&テューア・ヴァン・バーレン作≪ライフ・サポート≫。

<ドッグレースから引退したグレイハウンドを人間の呼吸を補助する犬とするためのトレーニングを施し、人工呼吸器を使う患者の「呼吸器具」として、第二のキャリアをスタートさせる>、というもの。
ドッグレースから引退したグレイハウンドは安楽死のようであるが、それをせず第二のキャリアへ、という試み、難しい問題を孕んでいるな。第二のキャリアは、人間の「呼吸器具」というワケだから。
これって、人間と犬、ウインウインの関係なのか。
倫理観の問題がある。ややこしい作品だ。

「見たことのない世界地図」。
日本地図も経済的なCRISISを表わした地図もあったが、一番大きなこれを。

ビュロ・デテュード作≪世界政府≫。
政治、経済の仕組みの中で、政府、企業、メディアなどの構造や、それらの関係性を地図として作品化している。

やはりアメリカが中心となる。
経済力ガバナンスであれ、何であれ。

世界の戦略的ガバナンスか。
ビュロ・デテュード、どこに住む人かは知らないが、この≪世界政府≫、年々出張ってきている中国の影が小さいな。

「静かに転倒する世界」。
リチャード・ウィルソン作≪Numbers≫。
徐々に狭くなる通路を進むと、表面に天井や壁が映りこむ。

どうも油が張ってあるらしい。
周囲に反転した世界が出現する。

奥行きや上下が分からなくなる。知覚の危うさに気づかされる。とても不思議な作品である。
平衡感覚が少し・・・、となる。
何でもないようでいて、何とも分かりづらい。ややこしい。

これは分かりやすいし、楽しい。「戦いのプラモデル」。
牛島陽介作≪見世物と化した戦争≫。

牛込陽介、こういうことを考えた。

で、牛島陽介、こういうプラモデルを作ったんだ。
手前はフォークランド紛争、真ん中は印パ紛争、左奥は東アジア紛争のプラモである。

フォークランド紛争。
・参加国:イギリス vs アルゼンチン
・スペクタクル:陣取り地雷撤去ショー「MINE SWEEPERS」
・スタジアム:地雷原
<1982年のフォークランド紛争は、1万を超える対人地雷を残し集結した。20XX年、両国は両国独自の工学や文化理念によってデザインされた無人走行マシンを開発、陣取りゲームを行い、・・・・・>、と牛島陽介は記す。

印パ紛争。
・参加国:インド vs パキスタン
・スペクタクル:「Silly−Walk」コンテスト
・スタジアム:ステージ・デコトラ「HATHAーMILANA」
<イギリスからの分離独立以来続くインドとパキスタンの紛争、20XX年、国境を隔てた二人のデコトラ職人が立ちあがる。・・・・・持ち前のトラック改造技術によって完成された一対のデコトラは、「HATHAーMILANA」(ハーサ・ミラーナ、ヒンディー語で「握手」という意味)と名付けられた・・・・・>、と続く。

東アジア紛争。
・参加国:北朝鮮 vs 韓国+日本+アメリカ
・スペクタクル:シンクロナイズド・ベースボール
・スタジアム:スタジアム・シップ「DONGーGIHAWA」
<20XX年、核ミサイルの発射を宣言した北朝鮮は、再びアジアに緊張をもたらしていた。・・・・・元NBA選手のデニス・ロッドマンを金正恩総書記のもとへ派遣する。・・・・・朝鮮半島近海へ送りこまれた世界最大のスタジアム・シップである「DONG−GIHWA」である。・・・・・北朝鮮文化からマスゲーム、アメリカ文化の影響の強い国から野球をとって掛けあわせた「シンクロナイズド・ベースボール」で・・・・・>、と牛島。
牛島陽介による紛争解決策、いずれも人を食ったものである。しかし、あり得ないことではない。
人がみな、しゃかりきにならず、ただ少しの遊び心を持てば。
それはともあれ、「うさぎスマッシュ」のうさぎ、さまざまなワンダーランドへ誘ってくれた。