MOT遊び(5) 楽しみはいっぱい。でも、少し考えなくちゃ。

二つ乃至三つの企画展を見終わっても、まだMOTの楽しみはある。
常設展がある。「MOT COLLECTION」である。常設展とは言っても、その都度展示変えが行なわれている。
MOT、4500点の収蔵品を持つ。

今年、年間を通じてのMOT COLLECTIONのテーマのひとつは、「わたしたちの90年 1923−2013」。
今年、関東大震災から丁度90年になるんだ。その90年間のことを、という展示があり、もう一つは、「ぼくからきみへ ―ちかくてとおいたび―」。

サキサトムの作品≪もう一つの物語 (ゲール語)≫。絵と映像。
ゲール語というのは、アイルランドなどで使われている言葉。英語に吸収されずに残っているそうだ。ゲール語に限らず、消えずに踏み応えている言語が表現されている。異なる世界の共存の可能性を伝えているようだ。

ホンマタカシ≪少年1≫。
「東京の子供」シリーズ。<写真家の主眼は、可愛らしさや瑞々しさといった、通常考えられる「子ども」の属性を捉えることとは少し違っているようです>、とパンフにはある。写真と他者ということを思わせる。

Chim ↑ Pomという名の6人組の日本の若者たちとの旅。カンボジアへ行く。
「セレブと言えば慈善事業→地雷撤去でしょ」、という思考経路を辿り、撤去した地雷で大事な私物を爆破、それを「アート作品」としてチャリティー・オークションにかけ、寄付する、という過程の中で・・・・・、というような旅の軌跡。解からないよね、こんな説明ではとは思うが。
上の写真のタイトルは、≪ドネイション(米)≫。米を寄付したんだな、おそらく。緑色の袋の中は米なんだ、きっと。
しかし、Chim ↑ Pomの作品、上の写真ではないんだ、と思われる。そこに至る軌跡なんだろう、彼らの創造物は。

加藤泉≪無題≫。
人間なのか何なのか、個であるのか繋がっているのか。「ぼくからきみへ ―ちかくてとおいたび―」かもしれない。

「ぼくからきみへ ・・・・・」、最後の部屋には肖像画がびっしりと掛けられていた。MOTのこの部屋に、これほど多くの絵が掛けられているのを見るのは初めて。50点以上が隙間なく。
石井柏亭、梅原龍三郎、宮本三郎、村山槐多、小倉遊亀、麻生三郎、草間彌生、・・・・・から奈良美智まで。
もちろん、岸田劉生の100年前のこの≪自画像≫も。多くの自画像を描いた岸田劉生、40に充たず死んでしまう。いい人物画を幾つも残して。充実した時間を持った。
それにしても、MOT、企画展と常設展、半日どころか一日中遊べる。蔵書数5万数千の図書室もある。地下には、レストランもある。野菜、肉、魚、のそれぞれの定食、サラダ、スープ、コーヒーもついて1680円。ご飯は、十三穀米。美味でコストパフォーマンスも高い。時間のない時には、2階のカフェへ行くのがいい。お薦めは、フォー。ヘンなくせがなく、旨い。

ところでこの日、常設展の方へ行き観て行くと、ギャラリートークに行き会った。ボランティアの女性が説明している。その周りで聴いているのは、若い男と女5〜6人。私も後ろの方でついて回った。
最後に、「何かご質問は?」、とボランティアの女性は言った。
で、こう質問した。
「ずいぶん前、石原慎太郎が都知事であった頃、こう言っていた。都の美術館、1000円を稼ぐのに7〜8000円のコストがかかる。これじゃたまったものじゃない、と。その頃から改善されておりますか?」、と。
ボランティアの女性、こう答えた。「私はそういうことはよくは解かりませんが、一時は新たな収蔵作品がまったく増えない、という状況があったようです」、と。
今でもMOT、採算はまったく取れていないであろう。人が多く入っているのは、アニメがらみの企画展の時のみだから。
このままでいいわけはない。少し考えたらどうなのか、と思う。
MOTの企画展の入場料、それぞれ1000円弱というものが多い。それでも同時開催の企画展を3つ観ると、2千数百円になる。
ところが、MOTの年間会員の会費は1500円なんだ。65歳以上だと、たった1000円。これで、年間何度観に来てもOKである。一回しか来ない人の入場料よりも安い。おかしいよ、どう考えても。年寄りだと、フォー一杯の値段で、一年間毎日来ても入場OKなんだから。
都の役人は、どうしてそのようなことを考えないのか、不思議である。
年間会員のメンバー・フィー、せめて2〜3倍程度に改定すべきである。東京都現代美術館を存続させていくためにも、そうすべきである。
フォー一杯の値で、一年間見放題なんて、どう考えてもおかしいよ。