ノリノリ恋のウディ節。

キム・ギドクの重くドロドロとした愛もあれば、ミゲル・ゴメスのセピア色に変色した植民地での灼熱の愛もあり、瀬戸内寂聴の”どちらも私を満たし、そして心を乱す”という湿気を含んだ愛もある。
いずれも愛には違いない。でも、考えてみれば、みんな肩に力が入っているなー。
この男が、こう言っているんです。「皆さーん、愛とか恋とかというものは、そうシャカリキにならずに、お気楽にー」って。
誰がって? ウディ・アレンですよ。

ウディ・アレン、ヨーロッパづいている。
途中一度だけ『人生万歳』でニューヨークへ戻ったが、バルセロナ、ロンドン、パリと続き、今回はローマである。
『ローマでアモーレ』だ。
シャレてるよ。ノリノリ恋のウディ節がこれでもか、と紡がれる。
役者陣は、アレック・ボールドウィン、ロベルト・ペリーニ、ペネロペ・クルス、エレン・ペイジ、・・・・・。ウディ・アレン自身も久しぶりに出演している。

それにしても、『ミッドナイト・イン・パリ』は、面白かったな。
時空をピョンピョン飛び越え、ヘミングウェイは出てくる、ピカソは出てくる、ガートルード・スタインは出てくる、いやー面白かった。ウディ・アレン、その次回作が、この作品。
それはそうと・・・・・
皆さまお気づき、右端のキスマーク、ベタッと妖艶。ペネロペ・クルスに違いない。

『ローマでアモーレ』、4つの物語が並行して進んでいく。
ところで、イタリア人の3要素ってご存知でしょうネ。
”食べること”、”歌うこと”、”恋すること”の三つ。イタリアの人たち、この三つで成りたっているそうだ。そういう物語。
もちろん、お約束のローマの観光名所はあちこち出てくる。
コロッセオ、トレヴィの泉、ローマの中央駅であるテルミニ駅、中心部を走るヴェネト通り、スペイン階段ももちろん。
歌もふんだんに歌われる。
イタリア民謡も、カンツォーネも、オペラのアリアも。
「ボラーレ」、「アディベデルチ・ローマ」、歌劇『トスカ』のアリア「星は輝きぬ」、『道化師』の「衣装をつけろ」、『椿姫』から「「乾杯の歌」、てんこ盛りでもてなしてくれる。
「アディベデルチ・ローマ」でローマを飛び去ったが、またローマに戻ってきたような感じにさせてくれる。
”ノリノリ恋のウディ節”、ウディ・アレン、「ありがとさんよ」である。

ところで、この言葉である。
「すべての愛(アモーレ)はローマに通ず」、という言葉である。
よく聞く言葉だよね。昔からのよく知られた言葉だよね。そうに違いないよね。
でも、いったい誰が言った言葉なんだろうね。
よく似た「すべての道はローマに通ず」は、17世紀のラ・フォンテーヌの言葉だそうだが、”愛(アモーレ)”の方は、いったい誰か。
17世紀どころか遥かに古いよ、きっと。2000年以上遡るよ、おそらく。
ユリウス・カエサルかも知れないな。多くの愛人を持っていたカエサルかも、な。