タブーに挑んではいる。でも、違う。

68年目の終戦記念日。

正午、日本武道館での全国戦没者追悼式。
NHKの画面に向かい黙祷す。

今上天皇のお言葉。
例年通り。
昨年よりは、お元気そうに見受けられる。
今上天皇には、いつまでもお元気で、という思いを強く抱く。

1945年8月15日、第二次世界大戦が終わった。
日本は、連合国へ無条件降伏をした。
「ハリウッドが壮大なスケールで描く、歴史サスペンス超大作!」、「終戦直後の日本で、マッカーサーが命じた極秘調査とは?」、さらには、「日本の運命を決定づけた衝撃の真実が、今、明かされる」、という惹句が踊る。

『終戦のエンペラー』、監督は、ピーター・ウェーバー。『真珠の耳飾りの少女』を撮った男。
この男を引っぱってきたプロデューサーは、奈良橋陽子。渡辺謙や菊地凛子を世界に売り出した『ラスト・サムライ』や『バベル』に関わっている腕利き。

1945年の今日、8月15日の正午、ポツダム宣言を受諾する、という天皇の詔書がラジオを通じて流された。
日本は負けた。
戦争は終わった。

昭和20年(1945年)8月30日、ダグラス・マッカーサー、バターン号で厚木飛行場へ降りたつ。
映画でマッカーサーに扮するのは、トミー・リー・ジョーンズ。はっきり言って似ていない。しかし、トミー・リー・ジョーンズこう言う。「あの帽子とサングラスとコーンパイプさえあれば、マッカーサーになれちゃうんだ」、と。確かにそう。マッカーサーになりきっている。
マッカーサー、部下のボナー・フェラーズにこういうことを命じる。
「この戦争を始めた本当の責任者は誰なのか。調べてくれ」、と。しかも、10日以内に、と。
違うよ。
この映画、事実とフィクションを咬みあわせている。それは、いい。
日本贔屓のボナー・フェラーズと、アヤという日本女性との恋物語は、それはそれでいい。しかし、主題は、あくまでも天皇の戦争責任問題。タブーに踏みこんでいるんだ。どうするか。
事実関係を記すと、
1945年9月2日、戦艦ミズーリで対連合国降伏文書に調印。
9月11日、マッカーサー、東條英機らA級戦犯38人の逮捕を命令。
東條英機、ピストル自殺をはかるが、心臓をはずし失敗。このことが、その後の東條英機に対する厳しい印象を加速しているように思われてならない。
9月27日、昭和天皇、マッカーサーを訪問。
12月16日、近衛文麿、木戸幸一など民間人9人の逮捕を命令。
近衛文麿、この日、服毒自殺。
翌1946年4月29日、A級戦犯28人を起訴。
5月3日、東京裁判(極東国際軍事裁判)開廷。
その2年少し後、
1948年11月12日、東京裁判、25人に有罪判決。
12月23日、東條英機ら7人に死刑執行さる。
東條英機、最後まで昭和天皇を守りきった。
この映画、日本びいきのボナー・フェラーズとアヤという日本女性とのラヴストーリーでもある。しかし、主流は、先の戦争の責任者は誰だ、と言うこと。

1945年9月27日、昭和天皇、この皇居を出、アメリカ大使館へマッカーサーを訪ねる。
あのよく知られることとなる写真が撮られる。
略装の軍服で腰に手を当てているマッカーサーと、モーニングに威儀を正し直立不動の昭和天皇とのツーショット。
日本人すべて、「俺たち負けたんだ」、と思い知らされた一枚である。

終戦直後、マッカーサーが命じた真の戦争責任者の極秘調査、当然に、これらの人たちへとなる。

顔写真は、左からボナー・フェラーズの通訳・高橋。架空の人物。その右は、開戦時の首相・東條英機(火野正平)。その右は、日中戦争時の総理大臣であり、3度首相の座についている近衛文麿(中村雅俊)。その右は、宮内次官・関屋貞三郎(夏八木勲)、架空の桃井かおりを挟み、内大臣・木戸幸一(伊武雅刀)。そして、右端は昭和天皇(片岡孝太郎)。
タブーに挑んではいるんだ。昭和天皇の戦争責任は、と。
しかし、ごくありきたりの纏めとなっている。
違うよ、と思う。
『昭和天皇独白録』で、昭和天皇が語っていることと較べても。
明日にする。