官能的カンフー。

1931年(昭和6年)、満洲事変勃発。翌1932年、日本の傀儡国家・満洲の建国。1937年、支那事変勃発。1945年の日本敗戦まで、日中15年戦争が続く。
刻一刻、日本軍による大陸侵攻が続く1030年代、ウォン・カーウァイによるカンフー映画、スタイリッシュな映像美に溢れる。

『グランド・マスター』。
監督:ウォン・カーウァイ。
ブルース・リーのカンフーの師匠・葉問(イップ・マン)の愛と宿命の物語。

葉問(イップ・マン)に扮するのはトニー・レオン、彼と交情する如く戦う女にはチャン・ツィイー。
今年のベルリン国際映画祭のオープニング作品である。

中国武術、多くの流派がある。
大きく分けて、北と南。1930年代、それを統一しようとする試みがなされる。
南の詠春拳の葉問(イップ・マン)と、北の八卦掌のゴン・ルオメイが闘うこととなる。生涯に一度の闘い。美男と美女の闘いである。スローモーションを多用した映像、とても美しい。

これは惹句である。
しかし、アジアを代表する美男、美女であるトニー・レオンとチャン・ツィイーのカンフーのやりとり、とても官能的である。闘いながら交情している。
1938年10月、日本軍は広東省佛山へ侵攻する。葉問(イップ・マン)も襲われる。歴史の事実であろうから目をそむけてはいけないが、日本軍の荒々しい行状の映像、重く突き刺さる。日本人には。
「侵略の定義は定まっていない」、なんて言っちゃいけないよ。
アメリカの映画を観ても、中国の映画を観ても、考えさせられちゃうんだから。

ウォン・カーウァイ、カンフーに託し、美しい映像を紡いだ。

黄と赤、中国を象徴する色が混ざったむせかえるような妓楼。中央に座っているのはチャン・ツィイー。
その磁器の如き肌、多くの人が参っている。欧米には、もちろんいない。アジアにも、チャン・ツィイー以外にいない、と言って。
そうかな。
そうかも知れないかもしれないし、そうとも思えない、とも思えるし。
しかし、『グランド・マスター』、官能的なカンフー映画であることは確か。