アジアが熱い。

G5は、どれぐらい前だったか。その後、G7になり、ロシアも入れてやろう、ということになりG8となった。
しかし、世界の実態経済とはそぐわない。どうもG8だけの世界とは違うのじゃないか、ということになりG20となった。BRICS(これにも変遷がある。お終いのエスが、複数を表す小文字の”s”から、南アフリカを表す大文字の”S”となった。時間は流れている)の国々ばかりじゃなくなった。
特にアジアが熱いんだ。
経済ばかりじゃなく、アートでも。
4、5日前、平塚ショウの個展へ行った折り、横浜美術館へも寄った。幾つかの企画展が催されていた。
メーンの企画展はこれ。

「Welcome to the Jungle 熱々! 東南アジアの現代美術」、と記された垂れ幕が下がっている。

「熱々! 東南アジアの現代美術」、シンガポール美術館のコレクションなんだ。

横浜美術館の玄関前には、こういうポスターも。
この人、悪名高いあの人だよ。

美術館へ入ると、こんな人が立っていた。
ナウィン・ラワンチャイクン作≪ナウィンはどこ?≫。2007年、FRP、彩色。
インド人の血を引くタイ人の作者、内なる自己を探りつつ、同じ名前や似た運命を共有する人を探し求めているんだ。

企画展の入口。
「ジャングルへようこそ」、と記されている。
”ジャングル”、ターザンのジャングルであり、コンクリート・ジャングルのジャングルでもある。でも、本来の意味は、
<「ジャングル」という言葉は、「無秩序な、文明化されていない」といった意味を持つサンスクリット語の「ジャンガラ」に由来するといわれます>、と横浜美術館のパンフにある。
そういうことか、初めて知った。
入口から少し見えている作品はこれ。

マレーシアの作家・ナディア・バマダジの≪寡黙な部屋≫。紙に木炭。
不妊にまつわる社会問題を表現しているそうだ。

フィリピンのイー・イラン作≪スールー諸島の物語≫。
13点組の発色現像印画。

「熱々! 東南アジアの現代美術」、これらの国々の作品である。
この中、G20に入っているのはインドネシアのみ。しかし、その他の国々も、今、熱い。
世界は、アジアの世紀となりつつある。

ロベルト・フェレオ作≪バンタイの祭壇≫。
伝統的なキリスト教の祭壇画が天に向って尖るピラミッド型に配置されることに対し、逆三角型に配置している。意味は深い。

マレーシアのチャン・ユンチア作≪芭蕉の娘≫。
陶器に油彩。35点組み。

シンガポールのリー・ウェン作≪世界標準社会≫。
ガラス、布、バッジ、紙、ビデオ。1999年発表のシンガポール初のビデオ・インスタレーションだそうだ。たしかに、面白い作品なんだ。
左側の方に、よれた白い布に包まれたビデオ・モニターがある。上の方には、羽根を広げたものが浮かんでいる。下の方の机には、”「世界標準社会」についてのアンケート”用紙がある。日本語のものと英語のものが。

その左の方には、今までのアンケートに寄せられたものが貼ってある。
何と、日本語のものより英語のものの方が多い。何たること。
それを知った私、アンケートに答えた。
そのアンケート、こういうことを問うていた。」
年齢、性別、年収はいい。主題は”ワールドクラス”。
「何が人をワールドクラスの人物にするか」、「ワールドクラスの都市と言われた時、最初に思い浮かぶのは、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、パリ、東京、北京、ムンバイ、クアラルンプール」、といったようなこともある。

アンケートを出した人には、バッジをくれる。このバッジの複製品を。
私も貰った。なかなかいい。カッコいいんだ。

PHUNK作≪電力都市≫。
カーボンインク・トランスファー、木、ビデオ。
シンガポール、香港、東京へのオマージュだそうだ。

スティーヴ・ティロナ作≪イメルダ・コレクション#1、3≫。発色現像方式印画。
悪名高くも偶像的存在のイメルダ・マルコス、何と、現フィリピン下院議員であるそうだ。
驚いた。

シンガポールのシャノン・リー・キャッスルマンの≪東南アジアの屋台車≫。
5点組みのインクジェット・プリント。
アジアのあちこちの屋台、こういうのもだ。懐かしく思える。

アラフマヤーニ作≪交差地点≫。
本作(旗)には、東南アジア発祥のアラビア文字による表記法、ジャウィを用いた単語が書かれている。アラビア文字も。
ここには、こういう言葉が記されている。
「死」、「正義」、「精神」、「献身」、「衰退」、「心」、「勇気」、「誠実」、「平和」、「故郷」、「愛」、「英知・知恵」といった言葉。
確かに、これだな、そうだな、といった言葉に繋がる。
熱いアジアにも。