「賛美小舎」 上田コレクション。

”横浜美術館は、多くの篤志家からの貴重なご寄贈をいただいております”、という意のことが横浜美術館のパンフに記されている。
<2011年には、「賛美小舎」こと上田國昭・克子夫妻からの150件171点が寄贈されて、1980年代以降の現代美術家の作品群に大きな厚みがもたらされました>、ともある。
横浜美術館の収蔵品・コレクション展、今年度の第1期展はこれ。

1940年生まれの上田國昭さん、岡倉天心の思想やマコト・フジムラが示す”日本文化の根底には、美を賛える心がある”、という考えに共鳴して、自邸を「賛美小舎」と名づけたそうである。
若手美術家の可能性を支援しようと夫妻で集めた作品は、自邸に飾られ保管され、やがて45作家と1組、360件以上の規模になったそうだ。
上田ご夫妻、その収集作品を一切売却せず、10館に及ぶ公立の美術館へ寄贈した、という。こういうところである。
東京都現代美術館、国立国際美術館、東京国立近代美術館、練馬区立美術館、栃木県立美術館、そして、横浜美術館を含む10館のようである。いずれもコンテンポラリー・アートに力を入れている美術館。どこか、ニューヨークのコレクター・ハーブ&ドロシーに似ているな。
その上田コレクション、日本画を学んだ作家が多い。上田ご夫妻の関心、”従来の日本画の概念を問い直す挑戦的な創作活動をする気鋭の画家たち”に向いているんだ。
そのようなコレクションの寄贈先として、横浜美術館は、10館中最多の寄贈を受けたそうだ。

入ってすぐ、10センチばかりの壁の隙間にこのようなものがある。

須田悦弘(1969年生まれ)作≪萩≫。木に彩色。
見落としてしまいそうな、ちっぽけな作品が壁の隙間にある。初めっから、素速いジャブを浴びたような感がある。

元々骨董が好きであった上田さん、このような経緯で現代美術の収集を始めたそうである。その始まりは、川崎麻児の作品との出会い。

川崎麻児(1959年生まれ)の作品が並ぶ。
左の作品は、≪静かの海≫。紙本着色。

川崎麻児作≪名作再訪≫。
堀辰雄、井伏鱒二、宮沢賢治、壷井栄、小泉八雲、太宰治、森鴎外、小林多喜二、井上靖などの作品への挿画。

川崎麻児作≪目を閉じて≫。紙本着色。
右側の出入り口は、映り込みですよ。しかし、それも含めて面白いじゃありませんか。私には、そう思える。日本画を学んだ男の作品、という一点でも。

右の大きな作品は、湯川雅紀作≪Cherry 1≫。カンヴァス、油彩。

小野友三(1964年生まれ)作≪無題(白から白へ)≫。岩絵具、膠、麻紙。6面組。

小野友三作≪Untitled≫。岩絵具、膠、麻紙、糸。

その一部を拡大する。
紙を折っているんだ。
ところにより、色が留まり、色が剥げている。それを美と感じるか否か。

武田州左(1962年生まれ)の作品。
左は、≪GLOBE・光・443≫。紙本着色。軸。
右は、≪GLOBE・170≫。紙本着色。6曲1隻。
右方の小さな作品も、タイトルはGLOBE、紙本着色。
続きは明日にする。