小学校の桜。

時折り通る道の脇に小学校の門がある。校門ではあるが、正門ではなく裏門である。ほとんど閉まっている。
ほとんど閉まっている校門の中には、大きな桜木がある。

伸びた桜木の枝、閉まっている校門の上を覆っている。

このような時季、ピカピカの一年生に行き合うことがあった。
片方の手はお父さんに引かれ、もう片方の手はお母さんに引かれたピカピカの一年生。普段はスーツを着ていないお父さんも、この日はスーツにネクタイ姿。お母さんは、春の余所行きのスーツ。その間に挟まれた一年坊主やお嬢ちゃんも、この日のための一張羅。
そう、例年ならば、ピカピカの一年生の入学式の頃である。4月の上旬頃の。

関東地方では、桜の花の満開の頃、4月上旬、小学校の入学式が行われる。
この小学校のほとんど閉まっている裏門の前の道も、正門の方へ向かう両親に挟まれたピカピカの一年生が通っていた。
ピカピカの一年坊主やお嬢ちゃんばかりでなく、その親御さんも幸せそうであり、それを見ている者も、どこか幸せな思いになる。
満開の桜木の下、そのような場である。

今年のこの満開の桜、3月26日であった。4月には、まだ間のある頃である。入学式にも早く、ピカピカの一年生の姿も見なかった。

一週間少し後の4月3日、また、その小学校の裏門の前を通った。
裏門の上いっぱい、覆うように花をつけていた桜木、ヒラリヒラリ花びらを散らしていた。ピカピカの一年生の入学式は、これからだというのに。

ほとんど閉まっているこの小学校の裏門の前、花の屑、花の塵が散り敷いていた。