マリーゴールド・ホテルで会いましょう。

昨日の『ライフ・オブ・パイ』は、インドの少年・パイ・パテルの神秘的であり、幻想的でもある漂流譚であるが、今日の『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』は、イギリスの老人たちのインドでのお話である。

監督は、アカデミー賞監督・ジョン・マッデン。とびきりの面白さ。
インドは不思議な国である。神秘的なところもある。幻想的なところもある。確かにそうだが、日常のインドは喧騒の中にある。まさに、おもちゃ箱をひっくり返したような、といった表現があてはまる。
所は、マハラジャの本場とも言えるラジャスタンの中心地・ジャイプール。そこへイギリス人のジイさんバアさん7人がやって来る。

こういうことだ。
7人のイギリス人の年寄り、それぞれの事情を背負っている。
40年もの間連れ添ってきた亭主に死なれたバアさんであるイヴリン。亭主が死ぬのは仕方ないが、知らない負債が多くあり家を処分しインドへ移住という次第。このバアさんを演じるのはジュディ・デンチ。昨年末の『007 スカイフォール』のジェームズ・ボンドの上役でも存在感を示していたが、この作品でもその存在感、圧倒的。
ゴタゴタしている夫婦者もいれば、最後のロマンスを求めるジイさんもいる。股関節の手術を受けるために嫌いなインドへ、というバアさんもいれば、判事をやめて昔住んでいたインドへという人もいる。皆さん、いずれも長期間インドへ滞在するという人たちである。
しかし、ジャイプールに着いたら、この状態。

前に座っているのは、主人公・イヴリンに扮したジュディ・デンチ。いや、その存在感、凄い。後ろは左から、ビル・ナイ、トム・ウィルキンソン、そして、マギー・スミス。いずれもイギリスが誇る名優ばかり。
因みに、ジュディ・デンチは1934年生まれで78歳。ビル・ナイは70歳、トム・ウィルキンソンは64歳、マギー・スミスはジュディ・デンチと同年の生まれで、現在78歳である。この作品の中でも、皆さんそのような年代を演じている。
インドだ、皆さんマリーゴールドの花輪を掛けている。

ホテルはぼろホテルである。しかし、イギリス人のジイさん、バアさん、アグレッシヴなんだ。ジャイプールの街中を闊歩する。
イヴリンはブログも始める。「あふれる音と色彩、暑さと喧騒、すさまじい数の人々・・・・・」、というような。

マリーゴールド。
7人のイギリス人のジイさん、バアさん、最も若い人で60代半ば、70前後が多く、最高齢は78歳。
でも、イギリス人の高齢者の皆さん、こう思うんだ。「変わるには、もう歳だと思う時もある。でも、本当の失敗とは”やらないでおくこと”」、と。

そうなんだよ。
イギリス人のジイさん、バアさん、皆さんアグレッシヴに行動する。地元のインド人とも、丁々発止のやりとりをする。インド、そういうところがあるんだ。
インドへはずいぶん行った。ジャイプールへも3度行った。ぼろホテルに泊まったこともあるが、ランバーグ・パレスに泊まったこともある。ランバーグ・パレス、マハラジャの宮殿を改装したホテル。いわゆるマハラジャ・ホテルと言われているホテル。
最初にジャイプールへ行った時、シルクのマハラジャ・スーツを仕立てた。
現地の人に紹介された店、高くても4〜50ドルと聞いていた仕立て代が320ドルだという。完全に足元を見ている。散々交渉をしたが、相手が引いたのは、たった30ドル。290ドルのマハラジャ・スーツは、翌朝ホテルへ届いた。
この白いシルクのマハラジャ・スーツ、日本では2度しか着ていない。日本の場にはそぐわないんだ。派手過ぎて。
最後のジャイプール行きは4年前だった。夜、市場で1〜200円のインドのシャツ・クルタを買った。懐かしい。また行くことがあるのかな。

インド、アグレッシヴなイギリス人のジジババに引かれ、逍遥したが、思いをさらす場にも。