ライフ・オブ・パイ。

ベンガル湾に面したインドのボンディシェリで動物園を経営していた一家、動物を連れカナダへ移住する。しかし、その途中で嵐に見舞われ船は難破、16歳の少年、パイ・パテルのみが救命ボートへ、となる。
ところがボートにはまだ乗っている動物がいた。シマウマ、ハイエナ、オランウータン、それに、ベンガルトラ。その内、シマウマはハイエナに食われる。オランウータンも。最後にベンガルトラが残る。少年とベンガルトラの漂流が始まる。

監督は、台湾生まれの巨匠・アン・リー。原作は、ブッカー賞を取ったヤン・マーテルのベストセラー・『パイの物語』。私は読んでいない。
趣向が凝らされている。
まず、少年のインドでの小学生時代の話。名前のことでいじめを受ける。とても頭のいい子供である。パイ・パテルのパイという名も、本名から捻り出したんだ。”π”を。円周率の”π(パイ)”を。
終わりの方では、助かった後、日本の保険会社の調査員から質問を受ける。遭難した船、日本の貨物船なんだ。保険会社の日本人、ベンガルトラと一緒に漂流していたなんて話は受け入れない。で、少年、あり得べき”らしい”話も語る。どちらを信用するか、と。
世俗の中に、神秘的、宗教的な神聖、といった下敷きが確かにある。それは感じる。
しかし、その間に挟まる少年とベンガルトラとの漂流が凄い。下手をしたら食われてしまう。少年とベンガルトラがいるスペースは、救命ボートと救命ブイを組合せた筏の上のみ。

何と、その状況の中、少年とベンガルトラは227日間も漂流し、メキシコの海岸へ漂着する。
信じられるか。信じるよ。
3D映像である。トビウオ、クジラ、ミーアキャット、の映像美も堪能できる。迫力あるし、美しい。

何と言ってもベンガルトラ、獰猛な動物である。その凄まじい咆哮が肝を冷やす。16歳の少年、パイ・パテル、最後までベンガルトラに食われずに生還した。
ベンガルトラの名は、リチャード・パーカー。最新のデジタル・テクによって可能となったそうだ。
宗教的な世界に思いを寄せるもよし、映像美に酔いしれるもよし。