恋のロンドン狂騒曲。

いつものように小洒落た話で手玉に取られるぞ、と思いながら、手玉に取られたい、という思いが勝り、つい観てしまうというのがウディ・アレンの映画であろう。

「懲りない大人が”恋の幻想”にとらわれて、寄ると触ると大騒ぎ!」 ウディ・アレンの最新公開作『恋のロンドン狂騒曲』である。
所はロンドン、いい年をした連中が、恋のから騒ぎを演じる。
結婚40年になるアルフィとヘレナは、離婚する。何と、アルフィは孫ほどの年の差の女と再婚する。ラスヴェガスで女優をしていたという触れ込みの女だが、実はコールガール。ヘレナも負けてはいない。霊の世界に入り、その世界で波長の合うジイさんといい調子。
アルフィとヘレナの間には一人娘がいる。名はサリー。彼女の亭主の名はロイ、売れない作家である。当然のことながら、サリーの母親のヘレナと娘婿のロイとの関係はよろしくない、稼ぎのない婿なんだから。
サリーが働きに出る。ギャラリーに勤めるんだ。そのギャラリーのオーナー、何ともカッコいい男。サリー、惹かれていっても不思議ではない。
サリーの亭主・ロイときたらこうなんだ。アパートの向かい側の部屋の若い女にのぼせるんだ。エキゾチックな美女、どうもインド系の女のようだ。ロイ、アタックする。
夫婦仲がおかしくなってしまった二組の男と女、4人が4人とも新しい局面へ踏み出していく。しかし、皆が皆、思い通りに行くわけじゃない。
概ね、いや、4人が4人とも思い通りにいかない。それが現実なんだ。ウディ・アレン、そのことを読み込んで提示する。そうなんだよ、現実は。解ってるよ、そういうこと。お前さんに言われなくても、ということも。

ウディ・アレン、1年に1作撮っている。
『それでも恋するバルセロナ』は2008年。ニューヨークが舞台の『人生万歳』は2009年。『ミッドナイト・イン・パリ』は2011年。
実は、『恋のロンドン狂騒曲』、世界中でヒットした『ミッドナイト・イン・パリ』の前年に撮影されたものだそうだ。


この映画、私は新宿の武蔵野館で観た。大きなスタンディーがあった。
その真ん中にはこのようなものが。

水槽である。
ビッグベンや二階建てバスの間に間にのロンドン。100年前、そして今のロンドン。その間に間に、水槽のあちこちに金魚が泳いでいる。