東博の巳。

東博、140もの年輪を重ねてくると、そのあちこちにさまざまな巳・ヘビが巣食っている。そのいくつかを。

<ヘビは日本だけでなく、世界各地の古代の美術や神話などに、よく登場します。たとえばギリシャ神話の・・・・・、古代エジプトの・・・・・、日本では・・・・・が有名です。ヘビが各地で、不思議な力をもつもの、あるいは神聖な神の使いとされてきたことには、いろいろな動物の中でも、とりわけ変わった姿形や動きをしているからなのでしょう。・・・・・>、と東博の初もうで資料にある。
今日は、立体的なものを主に。

パリッシーの写し、蛇の皿。
19世紀。その説明書きにこうある。
<明治9年、英国からの寄贈品。19世紀中頃に仏国で流行したデザインで、16世紀半ばのB.パリッシー(仏)の皿を写したものと考えられる>、と。
何世紀も前のものを写すだけのことはある。美しい。

蛇形容器。
地中海東部出土。淡緑、淡青色ガラス。4〜5世紀。
<融けたガラスを金属の吹き棒にとって息を吹き込み、蛇の形に吹き出し、両眼に別色のガラスを貼り付けて仕上げている>、とある。
ずいぶん昔のガラス細工、淡い色彩が儚げな風情を弥増している。

ナーガ上の仏坐像。
カンボジア、アンコール。石像。12〜13世紀。
<ナーガは「龍}と訳されるが、もともとは蛇神である。この像は大雨の中、座禅をするブッダを守る為、とぐろを巻いたからだにブッダを乗せ、7つの頭を傘のようにしておおう姿をあらわした像>。
この仏陀の顔貌、カンボジア、シェムリアップ、アンコールでよく見られるお顔である。

十二神将立像 巳神。
木造、彩色、截金、玉眼。鎌倉時代、13世紀。重要文化財。
<頭上にとぐろを巻いた鎌首を持ち上げる蛇をあらわす。浄瑠璃寺伝来の十二神将像は、・・・・・。この像も下に向いて口を開いて威嚇する姿が蛇を連想させる。髪が複雑にうねる様子も蛇を意識したものか>。

その頭部。
たしかに、とぐろを巻いた蛇が頭上で鎌首を持ちあげている。

自在置物 蛇。
宗義作。鉄製。昭和時代、20世紀。
<ギザギザのウロコをあらわした鉄の筒を、少しずつ径の大きさを変えながら作り、それを鋲で留めて1メートル近い蛇を作っている。そのパーツは全部で150個近くにもなる。・・・・・>。
匠、職人の技だ。

浮世七ツ目合・巳亥。
喜多川歌麿筆。大判錦絵。江戸時代 19世紀。
<ある干支と、それから数えて7つ目の干支の組み合わせは幸運を招くとされ、・・・・・。この絵では、巳年にちなんだ蛇の玩具と亥年の猪を描いた団扇が描かれている>。
やや年増な歌麿美人、どちらが巳年生まれで、どちらが亥年生まれなのか。

美人に紙蛇。
歌川国芳筆。色紙判摺物。江戸時代、19世紀。
<本図は、娘が鎌首を持ち上げた蛇に驚いて振り返った場面を描いているが、これは玩具の蛇、赤い雲が元旦をあらわし、蛇がこの年の干支ならば、天保4年(1833)の春興摺物となる>。
巳・蛇・ヘビ、へび、さまざまに表される。
だからこそ、巳。