デレク・ハートフィールド現象。

市ヶ谷のビストロ・カシーヌ、石田宏のスケッチ展会場のフレンチの店での飲み会の折り、Y.K.が、「これ何か分かる?」、と言って、ビニール袋から茶色いものを取り出した。
これである。

小さいがゴツゴツした感じの実。
「スダジイだ」。ほぼ同時に二人の男が声をあげた。一人は、動物ばかりでなく植物にも詳しい「どうぶつ社」の久木亮一。もう一人は、老人野球(東京では、シニア・リーグというそうだが)をやっているS.S.。野球も地べたでやるもの故、そこから生える植物にも詳しくなるもの、と思える。
「当たり」、とY.K.は言う。「ドングリは食べられないけど、このスダジイの実は食べられるのよ」、とも。ゴツゴツした殻の中にはドングリによく似たものが入っていた。「炒ってもいいが、生でも食べられる」そうだ。
スダジイの木自体は、私も知っている。東博にもある。デカイ木だ。3万坪の敷地から拾ってきたようだ。Y.K.に「3万坪の方から?」、と聞くと、「そうよ」、と返る。デレク・ハートフィールド現象だ。
デレク・ハートフィールドの名を知る人は多かろう。ヘミングウェーやフィッツジェラルドとほぼ同世代のアメリカの作家。1909年にオハイオ州で生まれ、1938年、エンパイヤ・ステート・ビルの上から飛び下りて死んだ男である。日本へは、30年ちょっと前、村上春樹がその処女作『風の歌を聴け』の中で紹介した。
しかし、「デレク・ハートフィールド現象」のことを知っている人は、誰もいないのではないか、私以外は、と思う。この言葉、私が作った言葉なんだ。デレク・ハートフィールドを知る人は、100万人以上いるのに、”・・・現象”を知る人はいない。まあ、それはいい。
ともかく、3万坪の敷地から、ということ、デレク・ハートフィールド現象なんだ。
Y.K.、デジカメの映像を次々と見せる。これが、いい。地べたのないところに住んでいる私には、とても珍しい。

これは、トケイソウ。
めしべが時計の針のように見えるそうだ。12本ではないようだが。

これは、ヨルガオだそうだ。
ヨルガオとユウガオは違う、ということも教わる。

これは、ヒルガオ。ヨルガオの仲間。

Y.K.のデジカメからは、まだ出てくる。
姫りんごのようなこれ、クラブアップルツリーというものらしい。それの実だな。

モミジアオイ。上手く撮れておらず(私の方でありますよ)、その色がよく出ていないのが残念だが、モミジアオイ・紅葉葵、その花の色、深みのある赤、紅、朱。

その内、このような画面が出てきた。
工藤静香である。前からのものもあったが、これは彼女の後ろ姿。二科展の折り、たまたま工藤静香が来た時と行き合ったそうだ。
ひと月ほど前、10月始めに二科展のことを記した。工藤静香の今年の出品作、≪Imagine≫の写真も載せた。この写真の左上、ボーと写っているのがそれ。目元、口元、父親・キムタク似の娘さん。
Y.K.、いや二科の会友、久保寺洋子のことである。その時、彼女の今年の出品作も載せた。
久保寺、工藤静香のことを、「いやー、細い」、と言っていた。そうだろうなあー、久保寺自身と比べてどうこう、なんてことを言ってはいけない、な。
3万坪の敷地に、というデレク・ハートフィールド現象にあるゴッドマザー・久保寺洋子、いつも心和ませてくれる。
3日前、久保寺洋子からメールが来た。こういう写真が添付され。

久保寺、こういうことを記している。
<私は花咲か婆さんを楽しんでいます。写真は今が旬のツワブキです。茎はきんぴらになるそうです。明日は那須に旅行です。・・・・・>、というメール。
この写真を見ると、これは、デレク・ハートフィールド現象の3万坪の方ではなく、たった100坪の二世帯住宅の庭の方らしい。
久保寺、まだ那須にいるんだろうな。