国士。

学生時代の先輩方のグループ展が京橋である。そのオープニングに出るため、夕刻、何人かの仲間と京橋の画廊へ行った。
オープニング・パーティーを途中で失礼し、東京駅へ行った。復原なった駅舎を見るために。
まず、八重洲地下街の居酒屋へ。でも、今日は大酒飲みのHとIの二人が所要のためいない。で、早く切り上げ、丸の内口の方へ歩く。新しい東京駅を見るために。
と、丸の内口の駅舎を出るところで号外が配られている。

号外を配っているこの男から号外を貰う。

なんと、京大の山中伸弥、ノーベル賞を取った。
号外配りの男と私の仲間のもう一人のIに、号外がよく見えるポーズを取ってもらった。

毎日新聞の号外、これである。
ヤッタ。ヤッター。嬉しい。

こういうことなんだ。大まかに言えば。

京大教授の山中伸弥、こういう人なんだ。
ここ数年、ノーベル医学生理学賞の有力候補として、山中伸弥の名は高かった。最右翼と言ってもよかった。
しかし、実は、私、心配をしていた。最右翼の有力候補と言われながら、ひょっとして受賞を逃すのじゃないか、と。世の中、そのようなこと、よくあることだから。
実は、ノーベル文学賞の有力候補である村上春樹についても、そのようなことを思っている。
ロンドンのブックメーカーでは、今年も受賞確率が最も高い男、となっている。そう言われながら、受賞を逃すのじゃないか、と。
実は、そう思っていたのだが、山中伸弥が受賞したとなると、今年あたり、村上春樹の受賞もあるやもしれない。

これが、「ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)のかたまり」だそうだ。
山中伸弥、ノーベル賞受賞の知らせは、大阪の自宅で洗濯機の修繕をしている時に受けたそうだ。その後の会見で、こう語っている。
「iPS細胞は新しい技術。仕事は終わっておらず、医学への本当の貢献をこれから実現させねばならない」、「大なる可能性はあるが、役立つところまで来ていない。まだ、受賞はないと思っていた」、と語る。
さらに、
「私は無名の研究者だった。国の支援がなければ受賞していなかった。日本という国が受賞した、と思っている。・・・・・」、と語る。
国の支援を謝し、日本という国が受賞したと言う山中伸弥、私の頭には、「国士」、という言葉が思い浮かんだ。
あちこちで国士面をしている有象無象など、足元にも及ばぬ、真の国士である。