パリ+リスボン街歩き (79) 極東。

リスボン滞在4泊。丸4日。夕刻に着き、夕刻に発つ。
市街から空港までは近い。都内の人なら、羽田のようなもの。タクシーでトランクの使用料(スーツケースをトランクに入れると、1.6ユーロプラスとなる)を含めても10ユーロ前後。
タクシー料金、東京よりも高い町を、私は知らない。
しかし、法外な値を吹っかける雲助タクシーは別である。あちこちでこのような運転手といきあった。第三世界の国々ばかりじゃなくヨーロッパでも。近場では、4年半前のマルセーユ。4、5人の運ちゃんに囲まれた。
このところの私、身の危険がどうこうというようなことは、さほど感じない。気にしない。どうにでもしてください、という感じ。しかし、夜半、周りに誰もいない初めての地、結局、雲助運ちゃんの要求を飲んだ。雲助タクシー以外、ホテルへ行く手段はなかったし。
それにしても、リスボンのタクシー代は安い。
コーヒーやビールの値段は、一昨日記したが、その他何事もリスボンでは安い。
例えば、スターターのサラダかスープにメインディッシュ、多いのはタラのグリルにジャガイモ、ニンジンなどの温野菜、それにワイン、終わりにカフェ、という簡単なコース。街中の食堂では、10ユーロ前後。私の泊まっていたホテルの食堂では、18.50ユーロであった。チップを入れても20ユーロ。
街中の中華屋で昼飯を食ったことがある。青菜と牛肉の炒め物でビールを飲み、その後、汁そばを頼んだ。二人で、チップを入れても20ユーロ。一人あたりだと、10ユーロである。安い。
ファドを聴きにいった店は、少し料理を頼み、ワインを飲んで、二人で70ユーロ程度。チップを入れて、一人あたり40ユーロ弱だったか。他の店よりは高かったが、テーブルチャージということもあろう。
パリでもそうであったが、リスボンでも、さしたるものは食っていないし、値の張るものも、何も買っていない。
リスボンで買った最も値の張るものは、孫娘の為に求めた手作りの靴。街中で見つけた子供靴の専門店で求めた。小さな革靴。24.50ユーロであった。孫娘は、まだ歩いてはいない。どうも、孫娘が歩く頃には、リスボンの革靴、小さくなっているようだ。
それはそれとして、パリ行きのエール・フランス、リスボンを18時30分に発つ。4時、16時頃、空港へ行く。

出発便の案内板。
18時台に発つ便の表示は、このようなもの。
上から、バルセロナ行き、カサブランカ行き、その次のテルケイラ行きというのは、大西洋上のポルトガル領の島。パリのオルリー、フランクフルト、ロンドンのヒースロー、その下のブラガンサ・ビラ・レアルは、ポルトガル北部の町。
その下に、パリ、シャルル・ド・ゴール行きのエール・フランス、AF1925便の表示がある。チェックイン中だ。
リスボンを18時30分に発ったエール・フランス、22時丁度にパリのシャルル・ド・ゴール空港に着いた。1時間の時差があるので、2時間半のフライトである。
シャルル・ド・ゴールで成田行きのエール・フランスに乗り換える。AF278便に。
AF278便、23時35分シャルル・ド・ゴールを発つ。
手狭な西ヨーロッパから広大なロシアの上空を飛ぶ。

と、このAdak、アダクが出てくる。
アダク、航空路で知る以外、名も知らぬ土地である。
アダク、ユーラシア大陸のアジアとヨーロッパを分けるウラル山脈(右側の白い所である)のヨーロッパ側の町。北極海に近い。おそらく、何もない荒涼とした町だろう。
しかし、空を飛ぶ飛行機にとっては、目印となる町なんだな、おそらく。

パリにしろリスボンにしろ、泊まっていたのは三ツ星ホテル。毎朝、ドアの下から新聞が投げ込まれているホテルではない。エール・フランスに乗って、久しぶりに新聞を読んだ。4月16日付けのインターナショナル・ヘラルド・トリビューン。
一面には、金正恩の写真が載っている。”親父のやり方を破っている”、との見出しがある。軍事パレードの折りの、金正恩のテレビで流された演説を紹介している。「父親とは異なる新しいリーダーシップを出している」、と。
ノース・コリア、北朝鮮の金正恩、その現代離れした容姿も含め、興味津々という状態であるようだ。
中面を見ていく。
ビジネス面にこのような記事が載っている。
「ソニーは、どうして突出した地位を失ったのか」、という記事がある。東京発の記事。
「ヒット商品不足、狙いがボケていることが、エレクトロニクスの巨人を追い詰めている」、というサブタイトルが付いている。ソニーの凋落を報じている。
それに引き換え、ビジネス面の他面には、このような記事がある。ニューヨーク発の記事。
「ド派手な中国人の買い物客が、アメリカの豪勢さへ」、という記事である。
サブタイトルには、「商店主は、マンダリン(北京語)を話す従業員を求めている」、とある。
写真も添えられている。ゴージャスな衣装に身を包んだ中国女性が二人、足を高々と組んでいる。そこには、こういうキャプションが付けられている。
「中国人の顧客が、ニューヨークのジェイ・メンデルの舞台脇でワイングラスを傾けている」、との。このジェイ・メンデル(J.Mendel)、ニューヨークの高級服飾店である。ドレス一着、数十万。注文服なら、100万を超えるという店である。その舞台脇で中国人のマダムが二人、悠然とワインを飲んでいる。まるで、ニューヨークを睥睨しているようなポーズにも思える。
本文の記事には、ニューヨークの著名なファッションブランドが、中国人の顧客のために、コンサートを開き、ファッションショーを催し、カクテルパーティーを行っている、と記されている。

ヨーロッパから見た日中の立ち位置、どうも、このようなものであるようだ。
それも現実であることを、私たちは知らなければならない。
日本国内にいては解らない。
これが、今現在の、西欧の極東に対する認識なんだ。そのことを、私たち日本人は、認識しなきゃ。
成田までの長い時間、ワインの小ビンを何回が貰った。
「パリ+リスボン街歩き」、これにて打ち止め、千秋楽とする。途中の幕間、思いの外長引き、2か月にもなったので、「パリ+リスボン」、完結まで5か月となった。
毎日お読みいただいた方々に、感謝いたします。