ラムとゴンゾー。

フロリダ半島のすぐ下、すぐ南はキューバ。そのすぐ下、すぐ南はウサイン・ボルトのジャマイカ。その右、東にドミニカ。その右、東にある島が、プエルトリコである。
プエルトリコ、アメリカの自治的未編入領域、つまり自治領、ありていに言えば保護領、属領である。
1960年代か、ニューヨークに疲れた男がプエルトリコのサンファンに降り立つ。ポール・ケンプという男、サンファン・スター紙の記者となる。

映画『ラム・ダイアリー』、こうして始まる。
原作・ハンター・S・トンプソン。脚本、監督・ブルース・ロビンソン。制作及び主演・ジョニー・デップ。
こりゃ、面白いぞ。

こういうこととなる。

プエルトリコ、人によってはカリブの楽園である。この楽園は金を生む、という連中もいる。土地をどうこうして金を稼ぐ悪党。その愛人であるブロンドの美女もいる。
そうなりゃ、ジョニー・デップ扮する主人公・ポール・ケンプと、どうこうの関係にならないワケはない。デンジャラスな恋だとしても。
島を牛耳る悪党や、ブロンド美女ばかりじゃない。時代がかったサイドカーや、赤いアメ車も出てくる。また、地方紙であるサンファン・スター紙の同僚連中、揃いも揃って、皆ドジなヤツばかり。何しろ、日がな一日、ラム酒を呷っているのだから。
ジョニー・デップ扮する主人公も同様だ。サンファンへ着いてから後、その土地に同化、ラム酒をあびている。
ラム酒、サトウキビを原料とする蒸留酒である。いわば、原料は違え、今、私が飲んでいる焼酎と同じ。

文字通り、こういう状態になる。「ラム・ダイアリー まったく節度なし」、という状態に。
確かに、”まったく節度なし”なんだ。
原作者のハンター・S・シンプソン、2005年に自ら命を断った伝説のジャーナリスト。
この男だ。
”GONZO ゴンゾー”という語を知らしめた。”ゴンゾー”、ならず者とか、気が触れた、という意。
ラム酒を痛飲すると、そうなるようだ。
カリブの島では、プエルトリコでは、”ラム”と”ゴンゾー”、比例する。
ラム、私は、「ジョン・シルバーの唄」を思い出した。作詞・唐十郎、作曲・小室等の名曲だ。
     75人で船出をしたが 帰ってきたのはただ一人 
     よいこらさあ よいこらさあ 
     残りは悪魔が片づけた それからラムがひとビンと 
     よいこらさあ よいこらさあ
唐十郎の名唱を。ゴンゾーでもある。