ブックフェア(続き)。

東京国際ブックフェア、毎年7月初旬に4日間。日本最大のブックフェアである。確か、来場者は世界40数か国から、と聞いたような気がする。

連日、規模の大小、有料、無料は問わず、多くのセミナーが開かれている。

今回の出展社の中では、大日本印刷のブースが群を抜いて大きかった。
大日本の今回のテーマは、「ハイブリッド出版ソリューション」。キー・コンセプトは、「ハイブリッドで拓く、出版の未来」。
丁度、「リアル書店が語る『電子書籍』への思い」、というブーストークショーをやっていた。サブタイトルは、”ホントの ホンヤの ホンネ”。

コンパクトなモリサワのブース。
電子書籍ソリューションとか電子雑誌ソリューション、と言った言葉がある。
熟々思う。ITの世界、デジタルの世界に於いて、ソリューションという言葉、とても便利な言葉である、と。

朝日新聞のブース。
内容は知らず、お気に入りの杏をキャラクターに選んでいる。そこのところ、とても良い。

書籍の世界に於いても、デジタルへの流れが加速している時代である。富士通、日立、ソニー、また、ヤフーその他、名の知れた企業、さまざまな提案を競い、訴えている。
その中で、ひときわ異彩を放つ企業があった。東芝である。上の写真の東芝。これほどまでにアナログ度の強い展示、他になかった。

確かに、異彩を放っているよ。しかし、東芝、ブックフェア担当セクションをそっくり取り替えた方がいい。来年のフェアに向け。余計なお世話ではあるが。

今年から、クリエイターEXPOも開かれるようになったそうだ。
ここは、作家、ライターのゾーン。

ここは、イラストレーターや漫画家のゾーン。
手前の人のブースには、”書籍・ポスター・パッケージ用メカイラスト、映画・アニメ・ゲーム・漫画用メカデザイン、TV・CM・舞台美術用メカデザイン、・・・・・”、と書いてある。何でも引き受けます、ということだ。

作家、クリエイターのゾーンにもさまざまな人がいた。
この人・菊谷さんは、和綴じの文芸誌を発行している人。和綴じ本500部に、普通製本本を合わせ出しているそうだ。失礼ながら、「それでやっていけますか」、と聞いた。「やれます」、という声が返ってきた。
菊谷さんは、「詩の呼吸のある文章を書く」、と謳っている。どのようなものも、”3.11以後の感性を持って”、と。
物書きでメシを食っていくこと、強い意志を持つ人でなければ遂げられない。菊谷さんのように、その実情は知らず、「やれます」、つまり、「食っていけます」、と返答できる男でなければ。
このような会話には、往々にして、ヤセ我慢ということを感じることがある。しかし、ヤセ我慢ということは、とても大事なことである。物書きとして、また、一匹狼として生きていこう、と考えている男には。

この人も脚本、原作、小説、その他どのようなものでもお受けします、という。この人のプロファイルを見ると、今まで多くの原作その他の作品がある。俳優でもある。
で、「どちらが直塚さんですか」、と聞いた。「私です」、と左側の人が答えた。
「じゃあ、右側の人、猛禽類のようなマスクを被り、手には鉄の爪の男は何なんですか」、と聞いた。明瞭な答えが返ってきた。「これは、単なる客寄せです」、という。
ウーン、これもひと捻りではある、な。

存在感があったのは、この人である。小説を書いている、という。
『匂へど散らず』と『銀座の深情け』の二作品を前面に押し出している。フロッピーディスクをどうぞ、と謳っている。そのフロッピーには、この二作品が入っている。作者は、この人・永盛五月。昭和15年生れ、現在71歳。生まれは、福島県郡山。だから、『匂へど散らず』のような作品が。
作者の永盛さん、”求む・紙出版”、さらに、”求む・劇画・漫画・アニメ・映画化”、と謳っている。訴えは通じたのか。それは分からない。難しかろう、いやいや、何とも分からない。
永盛さん、私よりは少し早く生まれているが、まあ同年。「あなたは何をしているのか」、と聞かれた。「6年前引退して以来、隠棲、閑居の身である」、と答えた。と、永盛さん、「それはいけない。ブックフェアに来るからには、何らか読んだり書いたりに興味はあろう。あなたも何かしろ」、と言う。
永盛さんも、何年か前までは編集者をしていたが、リタイアした後、小説を書き出したらしい。だから、「オレたちは、これからだ」、なんてことを言う。
元気印のジイさん・永盛さんの言葉に幾分触発された。やること、まだあるやも知れない。

その後、久しぶりのブックフェアに誘ってくれたMさんのブースへ行った。編集制作プロダクションのコーナー。
Mさんが言うには、今年から始まった作家・クリエイターEXPO、360〜370人が出展したそうだ。その1ブースの出展料は7万円だそうだ。手頃な価格、来年あたり、出展者激増、ということもあるかもしれない。
その後、モリサワのブースの後ろを通った。モリサワのブースの後ろ、こうなっていた。
そうだよ。写研とモリサワ、写植のモリサワだ。
その原点、ブースの後ろ側、解かるヤツにだけ解ればいい、その書体に思いを寄せる。