パリ+リスボン街歩き  (39) ウディ・アレン(続き×2)。

昨日載せた最後の写真、”ピカソが描いたガートルード・スタインの肖像”、複写元を書くのを忘れた。
この絵、1920年代、芸術の花咲くパリのゴールデンエイジのゴッドマザー、ガートルード・スタインを描いた有名な絵だ。ウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」にもよく出てくる。フルール街27番地のガートルード・スタインのアパート、そこのサロンが、映画の中でも大きな存在感を持っている。
また忘れるところであったが、ピカソの描くガートルード・スタインの肖像は、ガートルード・スタイン著、金関寿夫訳『アリス・B・トクラスの自伝 わたしがパリで会った天才たち』(筑摩書房、1981年刊)の巻頭の口絵から撮った。
でも、ちょっと待て。”アリス・B・トクラスの自伝”だろ、著者はガートルード・スタインだろ、どういうことだ。
この書、かなり大部なものであるが、面白い。ガートルード・スタイン自身の自伝なんだ。終わりの方に、こういうところが出てくる。
<もうだいぶまえから、たくさんの人や出版社が、ガートルード・スタインに自叙伝を書かないかと薦めています。そういうときいつもかの女は答えていました。とんでもないわ。かの女はわたしをからかって、わたしがわたしの伝記を書くべきだなんていい出しました。・・・・・それからかの女はわたしの自伝のための題を考え出し始めました。・・・・・『ガートルード・スタインとの二十五年』・・・・・>。
さらに、こうも。

<わたしはかなり立派なハウスキーパーだし、かなり立派な庭師だし、かなり立派なお針娘だし、かなり立派な秘書だし、かなり立派な犬のお医者さんだし、・・・・・>、と。
そう。
アリス・B・トクラス、ガートルード・スタインの秘書兼家政婦なんだ。25年の長きに亘り。さらに、あとひとつ、スタインの愛人であった。同性愛の間柄であった、という。
最後にこういう個所がある。
<どうもあなたは例の自叙伝、永久に書きそうにないわね。そこでわたしがこれからやろうとしていることわかる? わたしがあなたのかわりにあなたの自伝を書いてあげるのよ。・・・・・>。
ガートルード・スタイン、ウディ・アレンの頭の中では大きなスペースを占めているのだが、ガートルード・スタインに関わっていると、「ミッドナイト・イン・パリ」から離れていってしまう。ヘタをすれば、置き去りにしてしまう。ウディ・アレンのパリへ戻る。

ハリウッドの売れっ子脚本家であるギル、そんなものは捨て去ってパリで小説家になりたい、と思っている。ウディ・アレン、いきなり2010年から1920年代にタイムスリップ、ギルを花のゴールデンエイジに連れて行く。
そう言えば、黄色いプジョーに拾われて初めに行ったパーティーの主催者は、ジャン・コクトーだった。T.S.エリオットも出てきた。その後、フィッツジェラルド夫妻に連れられて行ったバーではアーネスト・ヘミングウェイに会った。ヘミングウェイからガートルード・スタインを紹介された。
ガートルード・スタインのアパート、サロンへ行くと、パブロ・ピカソがいた。いや、そればかりじゃない。ピカソの愛人であるアドリアーナがいた。
マリオン・コティヤールが扮するアドリアーナ、妖艶な美女どころじゃない。”妖艶を3乗”したぐらいの美女である。
「暗い眼をした、ユダヤ系イタリア人の絵描きとの半年間は忘れられないわ。他にも女がいたが」、「あなたが聞くから話したのよ」、とアドリアーナは言う。その男、アメデオ・モディリアーニなんだ。「ブラックにも女がいた」、とも話す。ジョルジュ・ブラックのことである。そして、今の相手はパブロ・ピカソ。
浮き名を流した相手、ビッグネームばかりじゃないか。しかも、”妖艶の3乗”の美女。1920年代のパリへタイムスリップしたギルが、フラッとなっても不思議でない。
いつものことだが、焼酎のお湯割りを飲みすぎた。頭がボウとしてきた。
こんなことをしていると先は長いが、今日はこれまで、とする。