空間。

古来稀なりなんて超えているのだが、人間の方はできていない。
地震や津波はまだしも、原発と聞くと頭に血が上り始める。特に、ガレキの文字には、過剰に反応する。いい年をして、人間がちっともできていないんだ。ガレキ処理と原発の相関関係にはこだわる。今年初め、三陸沿岸のガレキを幾らか見たこともあるのだろう。
昨日、一昨日、原発がらみとなってしまったが、そもそも一昨日、Hと会ったのは、犬飼三千子の個展を見るためであった。雨の中、京橋のビル街の中にあるギャラリーへ行った。

オッ、スッキリしているな。
ベニヤ板に細工しアクリルで彩色する、という技法は、このところの犬飼三千子が追及してきたもの。それの延長であることには変わりはない。しかし、今までの作品と異なり、とても洗練されいる感を受ける。
今回展のタイトル、”MY SPACE, AGAIN”、となっている。今ふたたびの空間、シャレてる。

将来はエラい人になるかもしれない、と犬飼が言う芸大の教師が、地下鉄の路線図みたいだな、と言ったそうだ。この作品を見て。たしかに、そうも言えるな。
動物に詳しいHは、DNAの何とかみたい、とも言っていた。

しかし、私には、マティスを思い出させた。
この左のものなど、マティスのダンスじゃないか。青ではなく、黒であるが。

写真ではよく判らないが、細く黒い木片には、幾つもの穴が開けられており、色が塗られている。赤や黄や青や、といった色が。細く波打ったようなそれぞれの木片に。
マティスの切り紙絵を想わせる。

床を観る。
さまざまな形に切り取られたベニヤ、何層にも重ねられている。
質感を感じる。空間を支える基盤である床、その質量、とても豊か。