パリ+リスボン街歩き  (35) セーヌ右岸(続き)。

ここいらあたり、飛びきり洒落ているわけではない。が、どことなく味がある。

建物も統一がとれていない感じ。でも、それが面白いとも言える。
なお、右端の店の黒く小さな日除け(?)には、”造本デザイン”という白ぬきの文字がある。”装丁”ではない、”造本”である。革装や箔押しなどの加工、ルリュール屋じゃないかな。今まで、日本でもフランスでも、見たことがない。

横町も味があるじゃないか。

その看板も。
この店、何屋かなと思ったら、この2人の写真の間に、”アムステルダム・裁縫”と書いてある。アムステルダムの裁縫術、とても精緻で、ヨーロッパ中に鳴り響いているのかどうかは知らない。要するに、仕立て屋であるようだ。

ウインドーにやけにラフな写真を貼ったこの店も、洋服屋である。

この店は解かりやすい。チョコレート屋さん。

これも解かりやすい。ギャラリー。
しかし、この日のマレ地区、カフェを除いてあちこちの店、ほとんど閉めていた。考えてみれば、この日は4月8日、日曜日であった。だから、あちこちの店、閉めていた。

この小さなギャラリーも閉まっていた。しかし、ウインドーにはこういう紙が貼ってあった。
右側には、草間彌生のカボチャの写真がある。3月15日から5月30日まで、日本のための写真展を開く、と。
左側の紙には、日本の地震の被災者のための慈善コンサートが、4月11日に開かれる、と書いてある。”こいのぼり”という名のクインテットが出演する、と。
今年の初め、岩手県の盛のスーパーでも見たが、フランスの人たち、昨年の大震災の被災者を支援するさまざまなことをしてくれている。ありがたい。

ウインドーからカンヴァスが見える。だから、ここもギャラリーであろう。ギャラリーにしては、少し薄汚いが。
そうは思っていた。後で写真を見てみると、右側にも、また、左の下の方にも、”Front de Gauche(左翼戦線)”、と書いてある。4月22日の大統領選の第一回目の投票で、4番目につけた左翼戦線のジャン・リュック・メランションのプロパガンダ。
ギャラリーが選挙拠点、というのもマレ地区、いや、パリらしい。

この建物には、”馬の購入”、”馬を買う”、と書いてある。
で、私も、左の方の格子の隙間から覗きこんだ。きれいな毛並みの馬が、3〜4頭いた。
ハハ、冗談ですよ、もちろん。
そんなことあり得ないであろう。21世紀の現代に。でも、そういうことを思い起こさせてくれる壁面である。

セーヌ右岸、マレ地区、何がどうではないが、面白い。古道具屋も多くある。
ずいぶん前、古い日本人形をウインドーに出している店に入った。その店の主、滑らかな日本語を喋った。若い頃長く日本にいて、カミさんも日本人だという。
来月、娘が日本に行くので、日本円でもいい、という。コンディションは、さほどいいとは言えないが、小さなアンティック・ドールを2体買った。たしか、3万円だったような気がする。
マレ地区を歩いていて、古道具屋に行きあたり、欲しいな、と思いながら買えなかったこともある。
いつか、小さな10センチ足らずのナポレオンの頭像を見かけた。聞けば、チェロの弦を張るところを使い、加工したものだ、と言う。欲しい、と思った。でも、買わなかった。聞けば、日本円で7万ぐらいの値。私にとっては、少し荷が重い。だから、諦めた。
セーヌ右岸のマレ地区、そのような思い出が幾つもある。