パリ+リスボン街歩き (10) ルーヴル(続き×4 500年前のドイツに)。

500年前、16世紀初めのヨーロッパ、ルネッサンスの真っ盛りという時期である。
イタリアでは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロといった大巨匠、スーパースターが大活躍をしていた。しかし、この時期、ルネッサンスは何もイタリアだけに限るものではない。主にフランドルの北方ルネッサンスがある。ドイツにもこの時期、3人の巨匠が出現した。
アルブレヒト・デューラー、ハンス・ホルバイン、そして、ルーカス・クラナッハの3人である。
レオナルド・ダ・ヴィンチ以下のイタリアのスーパースターに較べれば、ハデさでは敵わない。しかし、深さ、それが醸し出す不思議な感じ、何とも言えないものがある。特に、ルーカス・クラナッハの妖しげな美。

アルブレヒト・デューラー作「自画像」。素晴らしい作品だ。
15世紀末、1493年に描かれたデューラー22歳の時の自画像である。旅をしていたデューラー、ニュルンベルクに帰る前、バーゼルとストラスブールの間で描いたそうだ。この絵、カンヴァスに羊皮紙を貼り付けてある、という。
このところは買うこともなくなったが、以前は行く度に、何らかのルーヴルに関する本を買っていた。それによると、この作品は、ルーヴルがというより、フランスが持つ唯一のデューラーだそうである。美術の世界に於いて、イタリアに向ける眼差しは熱かったが、ドイツへのそれはさほどでなかった、ということであろう。ヨーロッパでのフランスの立ち位置を考えると、解からないではないが。

ハンス・ホルバインの作品。
左は、「サー・ヘンリー・ワヤットの肖像」。右は、「クレーヴのアンの肖像」である。”クレーヴのアン”、という女性、イギリス国王・ヘンリー8世の4番目の妻である。
ホルバインも多くの旅をしている。イギリスへも渡っていて、国王の専属画家にもなっている。多くの肖像画を描いている。

ルーカス・クラナッハも多くの肖像画を描いている。
宗教改革のマルティン・ルターと同時代人であり、親交があったそうだ。そのため、マルティン・ルター自身やルターの娘などの肖像も描いている。上の肖像画の人物も、当時の何らかに関わる人物であるのだろうが、説明写真が不鮮明の上、よく知らぬ男故、誰ということは省く。

それよりも、クラナッハといえば、裸体の女性である。
チラッと見ただけで、アッ、クラナッハだ、と解かる。これは、「三美神」。3人の裸体の女性が描かれている。クラナッハだ。


ヨーロッパの絵画で描かれる裸体、宗教に絡むものが多い。神話の世界もある。アダムとイヴの楽園追放の場面も、多くの画家が描いてきた定番だ。
これは、やはりこの時期、16世紀初めのフランドルの画家・ヨース・ファン・クレーヴの「アダムとイヴ」。

ルーカス・クラナッハの作品「風景の中のヴィーナス」。
何て魅力溢れる作品なんだ。何てエロティックな作品なんだ。クラナッハの作品は小さい。この作品も、天地33センチ、左右26センチというもの。しかし、クラナッハの作品ほど、エロスを感じる作品はない。何故なのか。
描かれたその女性、撫で肩、胸の膨らみは小さい、お腹は少しぷっくりと膨らんでいる。おそらく、今の美人の条件には合致していないであろう。しかし、とてもエロティックであり、魅力的である。

その答えは、おそらく顔にある。特に、目にある。この目が500年後の私たちを惹きつける。
500年前、魅力的な二人の女性がいた。一人は「ラ・ジョコンダ、モナ・リザ」と言われる女性、あと一人は、ヨーロッパの北東ドイツにいた撫で肩で胸が薄く、お腹がぷっくりしている女性。でも、とてもエロティックな女性。
ルーヴルで見る500年前のヨーロッパ、そのようなことを思わせる。